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───うわ、今日は、なんて日だろう。
口に出しはしなかったが、彼女は心の中でそうつぶやいて顔を歪めた。今日は昨日までの雪がやんで、せっかく気分が良かったというのに。
だが、それも仕方ない。彼女が日々を過ごすこの広いホグワーツ魔法魔術学校の廊下で、彼女は実に運のないことにできるだけ会いたくない顔をみつけてしまったのだ。幸い向こうはまだ気づいていないようで、リアは気づかれる前にそっと踵を返そうとした─────




「…おや?びびり屋のミス・グレイじゃないか。どうしたんだ、わざわざ引き返したりなんかして」

「………ぁ、」

「随分ひどい顔だな。まぁ、大方天敵の猫でもみたんだろう。昨日猫に威嚇されたときの情けない顔は見ものだったからね。そうだろう、ラット」



かけられた声にびくりと肩を揺らすと、笑い声がして揶揄うような言葉が投げかけられる。
それは、あんまりにもひどい言葉だ。しかしリアは、それをひどい言葉だと認識するより前に、逃げ出したいという思いでいっぱいいっぱいになっていた。
───気づかれてしまったた。わざわざこっちまで向かってくる。できるだけ離れるために後ずさるが、そんなことは当然無意味であり最後には背中が壁にぶつかり結局猫なんかよりよっぽど天敵である彼に追い詰められてしまった。
リアは頭が痛くなるのを感じながら、失礼にならない程度になんとか返事を返した。



「…わたし、ネズミじゃない」

「驚いたな、喋れたのか!」

「…ドラコ」



ああ、だから嫌だったのだ。
年下の男の子にまでこんなふうにからかわれるなんて、やっぱり恥ずかしいじゃないか。私がグリフィンドール生だったら、慰めたり反論したりしてくれる仲間もいたろうしいいのだけど………
リアは何度もそんな風に思ったが、それはただの望みにしか過ぎなかった。



「あのスリザリン生、またマルフォイにいじめられてるぞ」



リアの仲間は、彼女にとっては誠に残念なことに目の前で彼女を嗤っているこのドラコ・マルフォイを含めたスリザリン生なのだ。
リアは情けなく頬を引きつらせながら、涙目でドラコを見つめることしかできなかった。


160201
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