やさしさとアジテート

たのしいこと、うれしいこと、幸せなこと。
そういう物以上に、むかつくこととか、かなしいこととか、苦しいこととかつらいこととか、そういうものが私にだってあった。ほんとはずっと、それはわたしの心の奥底に渦巻いてた。

ただ、誰かに言ったりはしないようにしてただけ。だってみっともないから。
むかつきも、苦しみもしないで、ずっと笑っていられるような、強いひとになりたかったから。
私はトト子ちゃんのように超絶可愛くないから、こんな私が醜いことを言ったら、救いようがないって思ってた。絶対に秘密にしようって思った。
なまえはやさしいねって、おそ松くんがそう言ってくれるだけで、私は良かったんだけど。

だけどやっぱり、限界はあって。
要するに私は、疲れきってしまったのだ。あの日の私は内心ブチ切れてすらいたと思う。本当に我慢の限界だった。
チビ太のお店でムカムカしながら、押さえ込むようにお酒を飲んでいたら、何だか今度は哀しくなってきて、ふと死にたいとすら思った。

あんまりにも疲れきってしんじゃいそうだったから、もう全部、投げ出そうって思ったの。
仕事もやめよう。おそ松くんとも離れよう。そう思ってた。でもできない。最後のところで、私の理性が邪魔してた。
だけど、このままじゃ死んじゃうから。これは自衛のための戦争だった。私を守るために、私はやさしい私を追い出さなければならない。

そうして選んだ手段が、チビ太が前に言っていた優しい心を捨てることだった。
不器用な私にはこんな手段でしか殻を破ることができなかったのだ。実に馬鹿な話だ、と、おそ松くんを見上げながら思った。

160323
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