愛の巣

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残念そうというか少し私の言葉に項垂れた表情の総司さんはため息を溢し、ちゅっと唇に吸い付く。


濡れた唇は私の其に重ねられ呼吸を求め開いた隙を逃がさない総司さんの赤い舌はねっとりと唾液を絡ませて咥内を犯していく。


歯の付け根を擽ったり歯列をなぞったり時折私の舌を吸い上げたり酸欠するたび、何度も角度を変えて舌を絡ませ深く求められる。

「ん、ん...愛してるよ千鶴...けど少し愛し過ぎちゃったかな」


少し罰の悪そうな顔で荒い息を繰り返し肩を揺らす私を見下ろす瞳は慈愛で満ちていて、もう咎める気にもならない。


『はぁ、もう...帰って来るなり...今日は総司さんの好きなビーフシチュー何ですけど、食べますか?』


私がそう言えばぱぁ、と表情を輝かせながら自慢するかのように口を開く。


「当たり前食べるに決まってるじゃない!千鶴はきっといいお嫁さんになるね。僕嬉しいな」



ん、なんか私は嬉しくない...な。

だって、なんか他人事みたいな...いや何時もはストレートに褒めてくれるのに...。

そういう事言われたら余計、同居しているのにまだ彼女止まりって事を真剣に落ち込みそうだな。


ベッドに沈む身体の共に私の落ち込む気持ちを引き上げたのは確信犯だったらしい総司さん。


ぐいっと腕を引かれ力一杯抱き締められ耳元で甘く囁かれた宣戦布告。


「だから、千鶴僕以外の男のいいお嫁さんになんてならないでよ...その時は許さないからね」


その一言にほっとするやら恥ずかしくなるやら愛されてるなぁなんて実感するもののやはり私は毎度の如く総司さんに心の中を掻き乱されてるような、...。


“好きな子には意地悪したくなるんだよ...”


時々、総司さんは悪魔みたいだなって思うけれど彼の場合は愛情の裏返しだと理解しているから...。


私は、この優しい悪魔に結婚するまで振り回されるのかと思うと身が持つのか。

先の事に不安やら期待やら、けれど...


「ねぇ、早くご飯頂戴...それとも君が僕に食べられる?今度は本当に食べちゃうよ」

背後から伸びてくる腕に捉えられれば頭の上にのし掛かる総司さんの顎。


『それは絶対お断りです...食事の用意をするので離して下さい』


兎に角、今はこの愛しい悪魔に振り回されてあげよう。


私は、するりと彼の腕から身体をすり抜け寝室を後にしたのだ。


「冷たいなー、僕はこんなにも愛してるのに」


と、閉まる扉越しに聞こえた拗ね口調な言葉に頬を赤らめ幸せのため息一つ吐いて、冷めきっているであろうシチューを温めなおすのだった。



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