大鷲と香芽

「梅雨ですねー」

大鷲は部室の窓を眺めて、大きくため息をついた


今、部室にはオレと大鷲しかいない、


それもそのはず、今日は部活がないのだから

だから空いているであろう部室を借りて、こうして珍しく真面目に週末課題でもこなしてしまおうかと考えていたのだ


考えていたのに


「…何でいるんだよ、大鷲」

「え、いちゃいけませんでしたか?」

「………」


鍵が無かったからおかしいと思ったんだ

来てみたらこいつが椅子に座ってジュース飲んでて、あ、レオン先輩ー!とか言って手を振ってて、


直感的に感じた


週末課題は終わらない


「…今日は練習、無いぞ」

「知っていますよ」

「じゃあ何でここにいるんだ」

「レオン先輩こそ」

「…オレは、週末課題を終わらせに来た」

「じゃあオレもそれで」


駄目だ、全く話にならない

機嫌がとびきり良いのか知らないが、今日は冗談をよく言う


こっちの気も知らないで、大鷲は大きく屈伸をして欠伸をした



「先輩は、梅雨、嫌いですか?」

突然そういう事を聞いてくるものだから、オレの数学でパンクしそうな頭はたちまちショートしてしまう

もう少しで解けそうだったのに、今ので数式は全て飛んだ

くそ、もしかしてわざとなんじゃないか?


軽くジト目で睨んでやっても、大鷲には効果は無いらしい

カエルは喜んでましたよね、なんて言ってる


「……オレは、梅雨は嫌い」

仕方なしに返答する


オレは梅雨は好きではなかった

洗濯物は乾かないし、じとじとしていて蒸し暑いし、何よりサッカーが出来ない


…イコール、こいつにもなかなか会えないって事で

今日は会えたけど


「オレは、梅雨、すきなんです」

「……なんで」

「教えてほしいですか?」


…なんかムカつく

答えてやらないでいると、大鷲は勝手に話を進めて行った

なんだよ


「雨がたくさん降っていると、サッカーの練習ってなかなか出来ませんよね」

「って事は、後輩であるオレは、先輩になかなか会えないって、事になるんです」

え?

「でもそれって、逆に考えたら先輩は、暇な時間宿題するかもって思って
宿題が大変って、言っていたでしょう?」

何それ

「だからオレ、先輩が来るかなってところに先回りしてたんです」

大鷲も、同じだったと言う事?

「そしたら、部活じゃなくても会えるでしょ?」

うっそ…



「ね、予想通り」

「う、ゎ」


気付いたら大鷲はオレの間近くにいて、気付かなかったオレもオレだけど、びっくりして変な声がでた


「先輩、真っ赤ですよ?」

「うるさい、真っ赤じゃない」

「もしかして、先輩もオレに会いたかったんですか?」

ぎくり


冷や汗が出た

こういう感情は、なかなか伝えるのは難しい

だから、オレはいっつも気配を消して、もろともバレないようにしてて、


「なんて、オレの思い上がりですよね、すみません」

「……、」

「先輩はオレの事すきじゃなくても、オレは先輩の事だいすきですよ」

「、」


もう駄目だ

向こうから遠慮無く言われてはどうしても反応してしまう

否定しきれない程にオレの顔は真っ赤っかだった


大鷲がオレの隣に座る

ああ、きっと心臓の音も聞かれてる

なんてったって隙間を逃さないから、


もうヤケだ、どうにでもなれ


「……ら」

「?」

「…レも、す…き…だ、から、」



チラ、顔を覆った両手の隙間から大鷲を覗く


大鷲は少しはにかんだ表情で、満足げに、両想いですね!とつぶやいた




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ストーキング大鷲とモジモジレオン

なんかこっちが恥ずかしい


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