佐久間と鬼道



一度染み付いた感覚は、なかなか取れるものではない。

それは癖であったり習慣であったり、
色素沈着だって、その類だ。


同じように、想いも。


俺の心に焼き付いて、頑なに離れようともしない。

そして俺はその度に何度も悩み、傷つき、
身悶え苦しむ事となる。



分かっているんだ、叶うことなどない事くらい。


分かっていたんだ、自分とあのヒトとの間にどれだけのキョリがあるかなんて。

俺がその赤いマントに触れようと手をのばしたって、いつの間にか遠くにいってしまう事くらい。


そう、俺は、 俺とあのヒトは、

近くて遠い。


俺はあのヒトの心の支えにはなれはしないんだ。



でも、

でも、少しくらい。



「ーーー…」


「ーーー久間」

「佐久間」


少しくらいは良いじゃないか。


「佐久間、聞いているのか?」

「え?っあ、すみません、ぼうっとしていました…」

「…全く、睡眠時間が短いせいだぞ。
今夜から気をつけろ」


ほら、そうやって俺を気遣ってくれるその心に、


二人だけのこの空間に


俺に向けられたこの視線に


「…はい、」


叶わない恋だとしても


焦がれたって、

ときめいたって、良いですよね?
鬼道さん。


あなたがすきです。




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佐久間の片想い



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