アポロンとアルテミス

「…屑でも構わないんです」


そう唐突に切り出した実弓は光に顔を向ける事も無く白い粒が散らばる空を見つめていた


「星の事か。
月じゃないのか?」

「ええ」

「俺たちがみている光はずっとずっと昔に死んだ星の最期の瞬きだって、アテナが言っていたけど」

「ええ」

「実弓は死にたいのか?」

「いいえ」


青白い月が実弓の蒼白い仮面を照らす

光の深緑の瞳に月光を映すように顔を向けて、強い願望を込めた静かな声色で実弓は呟く


「あなたに光を届けたいのです」


環境音すら打ち消されるような静寂の世界で、光は瞳を細めた

何時もは控えめな月光が今は眩しく映った


「じゃあ、俺は実弓の星に名前をつけてやるよ」

「本当ですか?」

「ああ、そんでそれを手紙に書いて、俺も星になって実弓に届けてやる」

「それじゃあ、アポロンの星の名前をつける人がいませんよ」

「いいんだよ、俺は自分でつけちゃうから」


自信満々に言う光を見つめ、実弓はやっぱり駄目ですと首を横に振った

(アポロン、あなたは星屑などではなく眩いほどに輝く太陽が似合うのです)


「ズルいよ、実弓は」


むくれ顔の光にすみませんと謝りながら、いずれ訪れるその時を思い描いて仮面の下で微笑んだ



『星屑になった君へ』





title by 思えばまたいつか、

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お題をお借りしました!


自分の存在を光くんに焼き付けたい願望を持つ実弓ちゃん



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