照美と啓

「神さま、知ってる?」

僕の腕の中で身を寄せていた啓が、思い出したかのように口を開いた

上目使いで僕を見上げ、ぼんやりとした瞳に僕の赤目を移している

眠たいのかもしれない


「何をだい?啓」

「神さまは、人間の利己心が作り出したまがい物なんだよ」

「啓は怖い事を言うね」

「みんなみんな、理想の神さまを創造して、崇拝しているんだ、

ーーきっとそう」


ふにゃりと微笑んで僕の胸に顔をうずめる啓の頭を撫でて、そうかもしれないねとだけ答えた

啓はふふ、と微かな笑い声を上げて、細い腕で僕の腰に抱きつく


「どうしたんだい、啓は気まぐれさんだね」

「神さま」


ぱ、と顔を上げ僕をみる啓の表情はなんとも満足げで、砂漠に咲く一輪の花のように僕の瞳孔に焼き付いた


「神さまは、俺だけの神さま」

「俺の理想の神さま」

「でしょう?神さま、すてきでしょう?」



「そうだね、啓」

「とても素敵で、すばらしい事だと思うよ」


そう呟いて額にキスを落とす僕の心はずいぶんと満足げだった




ああ神よ、僕だけの理想の神よ


どうか僕らに祝福を




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照啓は難しい



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