アポロンとアルテミス

「ここにひとつ仮定をたてましょう」


実弓が人差し指をピンと立てて俺に言う

公園の机に肘をついて、コンビニで買ったジュースを片手に話を聞いた

仮面からは表情は伺えないが、声色から伺うに、何やら俺の調子を伺っているような雰囲気であった


「仮定?」

「そう、仮定です」

反復した言葉が交わされると実弓は立てていた人差し指をしまい両手を机の上に置いて拳を握った

俺は呑気にジュースを飲んでいる

もうそろそろなくなりそうだ


「アポロン、もし私が仮面など付けていなくて、極々普通の中学生としてあなたの隣にいたら」

「あなたは私に興味を失いますか?」


投げかけられた問い

簡単すぎる問いに俺は冗談で返そうと思ったが、思った以上に実弓は真剣だった


「私はよく不安になるのです、」

「アポロンが私と仲良くしてくださっているのは、私のこの出で立ちが愉快だからなのではないか…と…」


実弓は俯くと拳をさっきよりもキツく握りしめて、すみませんと俺に詫びた

しばしの沈黙

ジュースはもう空になってしまっていた


俺が黙っている事に不安や疑問の思いが芽生えたのだろう、実弓は顔を上げて俺の様子をうかがっていた


実弓、俺、怒っているんだぜ

実弓があんまりにもバカな事で悩んでいるから

もう、ほんとバカ


俺は勢いよく立ち上がって唖然としてる実弓の頭をがっちり捕まえて冷たい仮面の上から実弓に音で分かるくらい大きくリップ音を立ててキスをした

そのままの勢いで何も言わずに手を引っ張って宿舎へと向かう


これで何にも分からなかったら、実弓は天然決定だ

でも、ああ、ちゃんと気付いてくれたみたいだ


耳を真っ赤に染めて慌てている実弓に笑顔を見せて、少し赤みがかかった空を見上げた


はじっこの方でうっすらと輝く月は微かに赤く染まっていた




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実弓は考えすぎちゃってすぐ不安になっちゃう子

アポロンに何気なく思った事口にできるのはやっぱり、アポロンの事が一番大切で信頼してるから



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