アポロンとアルテミス

アポロンは作業を中断することを嫌う

それは勉強の時もそうだし、遊んでいる時もそう、もちろんサッカーをしている時もそう


そして今こうして私の仮面を取り上げて口元にオレンジを押し付けている時もそうだ

「実弓」

にこにこと太陽のような笑みを浮かべ私にオレンジを食べさせようとするアポロンに私は眉をハの字にして視線を送った

彼の意図が分からなくて


先ほども述べたように、アポロンは作業を中断することが嫌いだ

なので彼の機嫌を損なわせないよう、私は手も足も動かさずに唇に当てられるオレンジの酸味と戦っている訳だが、これは食べろと言うことなのだろうか


「実弓は、もっと食べた方がいいよ」

ようやく口を開いた彼の言葉は予想通りと言うか、やはり食べることに関することで、私は以前眉を下げたまま彼の手に触れた

アポロンは私に微笑みかけると押し付けていたオレンジを唇から離す

果汁が唇に付着していて甘酸っぱい


「アポロン、」

「実弓、実弓はもっと健康にならなきゃ」

私の言葉を遮って、開いた私の唇に彼の唇が触れる
いつの間にかオレンジは彼の口の中にあって、先ほどよりも確かな酸味と甘味が私の口腔を刺激した

唇が離れると彼はもう一切れの果汁を口に含み、先ほどの行為を繰り返す

私は受け身のまま彼の瞳をじ、と見つめていた


「オレンジは、元気になれる果物」

「太陽みたいにまんまるで、太陽みたいに明るい果物」

にい、と無邪気な笑みを私に向け残りのオレンジを取り出す


「きっと太陽の祝福を得られる、実弓も、俺も」

「ね」


彼の瞳は太陽みたいにまんまるくて、太陽みたいに明るい輝きを放っていた

私は目の前の太陽の声に首を縦に振ることで答える


太陽は、随分と甘酸っぱい味がするのですね


私の言葉に彼は満面の笑みを浮かべ、そうだよ、とだけ応えた




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友達以上恋人未満



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