「おじゃましまーす」
そう言って玄関で靴を脱ぎズカズカと奴の部屋へ向かう、それが10分前のこと。そして今奴が紙を捲る音だけが部屋に空しく響く。

今日は久しぶりに練習が休みだったから源田の家に押し掛けてやった。
なのに源田の奴ときたら俺が来てやったっていうのに少し待っててくれもう少しで読み終わるんだ、と言ったきりさっきからサッカー雑誌に夢中で俺の方を見ない。最初の内は俺も部屋にあるマンガ読んだり、机の棚をガチャガチャ漁ってみたり好き勝手にしていたがそろそろ暇をつぶすにもする事が無くなってきた。源田の方を見ると未だ雑誌に夢中なご様子。開いた窓から涼しい風が吹き、源田の髪がふわりと靡く。
何をするでもなくベッドに腰掛け足をブラブラさせていた俺はなんだか空しくなってきた。そもそも俺は我慢強い方ではないし、人が本を読み終わるのを待ってやる気遣いなんてものはさらさら持ち合わせていなかった。
ベッドから降り、熱心に文字を追いかける源田の膝の上に頭を乗せる。いわゆる膝枕というやつだ。まぁ、女とは違って柔らかくないから気持ちよくも何ともないが、下から見える源田はまるでサッカーを覚え立ての少年のように瞳をキラキラさせ夢中に雑誌を読んでいた。
っていうかこれは俺が膝に入るの気付いてないのかよ源田のクセに生意気だなおい。
俺を見ろー、と念を送ってみる。

しばらく源田の顔を見ながら無言で送り続けていると届いたのか、源田の手が俺の頭に伸びてきた。
視線は未だ雑誌に落としたままポンポンと優しく撫でられる。なんだかガキ扱いされたようでムッとしたから手を伸ばして上にある源田の頬を抓る。
「いふぁい」
「俺様を無視して紙ばっか見てるからだ」
突然のことに驚いたのか肩を一瞬震わせ源田が言う。やっとこっちを見た。それに満足してヒャハハ、と笑い手を離す。
源田は赤くなった頬をさすりながらしょうがないなと言って笑い、ようやく雑誌を手放し床の上に置いた。またガキ扱いしやがった、その笑った余裕そうな顔がムカついたからもう一度抓ってやった。
源田はさっきと同じ反応をし、また優しく微笑んだ。

窓から吹いた風が俺と源田を優しく撫でていった。




おわり100618

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