▽不動さんと久遠監督でハッピーハロウィン




「トリックオアトリート!」

玄関の扉を開くと白い物体が俺の前に現れた。
「何をしているんだ?不動」
靴を脱ぎながらその物体に話し掛ける。なぜ白いシーツを被っているのかは分からないが、この家に住んでいるのは俺と不動だけだ、物体の中身は考えずとも分かる。
「トリックオアトリート!トリックオアトリート!」
そう叫びながらペタペタと裸の足を鳴らして俺の周りをグルグルと走り回る。
「トリックオアトリート!」
「寒くないか?風邪を引くといけないからしっかり足元は暖めておけ。」
丸められて床に転がっていた靴下を拾い、シーツで隠れた手の代わりに白い頭に引っかけてやる。
「トリックオアトリート!トリックオアトリート!」
気付いていないのか、不動は頭に靴下を乗せたままグルグルと俺の周りを走っている。何故そうしているのかは分からないが、楽しそうなのでそのまま好きなようにさせておく。

台所に行き冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出し居間へ戻る。未だ不動は俺の周りを走っているが構わずソファに腰掛けて缶のフタを開け口をつける。
リモコンでTVの電源をつけると画面の中ではどこかのデパートが映されていて、女性リポーターが棚に陳列されてある紫や橙の飾りがゴテゴテとつけられた南瓜を紹介していた。

なるほど、ようやく合点がいった。

俺はゴソゴソとポケットをあさり、さっき家の近くの商店街で配っていたモノを思い出し、ソレを探した。
小銭がジャラジャラと動き回る中にソレを見つけ、掴んで取り出す。
「トリックオアトリート!トリックオあぶっ!」
やけにキラキラした小さな包装を外し、不動の口のあたりに押しつけてやる。
そうすれば、モタモタと中の物体がシーツを捲って顔を出しソレを私の手から奪って口に放り込んだ。
「おっせェ」
口の中に物が入っているから不動が何と言ったのか良く聞き取れなかったが、大人しく舐め続けているのを見ると、どうやら満足しているようだ。
それを見届け、俺はビールを呷る。外の空気で冷えていた体がアルコールで暖かくなってきた。
「なんか小銭くせェんだケド」
また不動が何か言ったようだったが、ちょうどTVの中の子供達が叫んだ今日1日限りの言葉でそれはかき消された。



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