新技特訓の為に鬼道と二人で宿屋の近くの広場に来た。
朝早くに練習を始めたが太陽はあっと言う間に登り、降りかかる日差しは2人の疲労を誘った。練習で潰れてしまっては意味がない。鬼道が休憩にしないか、という言葉に俺は頷いた。

「はぁ〜あっちぃなぁ」
「そうだな……」
公園のベンチに2人してグッタリする。ちょうど木陰になった場所を選んだがそれでも気休めにしかならない。
「あっ……鬼道ちゃん向こうでアイス売ってる」
「……そうだな」
「てめぇそのゴーグルん中の眼球溶けてんじゃね、アイスはそっちじゃなくてあっちだ」
そう言ってどこか空を見ている鬼道の頭を掴んでグルンと方向転換させてやる。
「あぁ本当だ…。」
「んじゃ鬼道ちゃん俺の分もよろしく」
「……は、」
鬼道の手を掬って手の平に小銭を乗せる。
「なぜだ…」
「なぜって鬼道ちゃんも食いたいだろ、アイス」
丁度向こうで小さな女の子が母親に買って貰っているのを見て鬼道が唾を飲み込む。
「だからってなぜ俺なんだ」
「鬼道ちゃんの方がゴーグルしてるし俺と比べて直射日光当たんねーじゃん」
「もはやこの暑さでゴーグルの一つや二つも変わらないだろう。俺だって暑いものは暑い」
えぇー、と不満の声を上げて俺は盛大にベンチの背にもたれる。遠くでおかあさんアイスおいしいねー、という声が聞こえた。

「なぁ不動、ジャイケンで決めないか」
「おー、そうだな」
体の向きを変えて向かい合わせになる。掛け声とともに腕を振るった。

「くっクソ…!」
「ははは天は俺に味方したようだな。ほら不動早く買ってこい」
そう言って鬼道は自分の分の金を握らせる。
「くそ……行ってくる」
ベンチから腰を上げて日陰出る。暑さに一瞬くらりとするが踏みとどまって目的地に向かう。


適当にバニラを2つ注文して受け取る。両手に持ったアイスが溶けて仕舞わないよう少し早足で鬼道の元へ向かった。

「ん」
「あぁありがとう。」
鬼道の分のアイスを渡してベンチに腰掛ける。
歩いてこちらに向かっている内に溶けてしまったらしい、手に垂れたアイスを舐め上げる。
ふと横からの視線に気づいて顔を上げると鬼道が食い入るようにこちらを見ていた。
気づいていないのか鬼道の持ったアイスから白い滴が垂れて鬼道の手を汚す。俺はニヤリと笑ってから、
「鬼道ちゃん、アイス垂れてんぜ?」
「あっ、ああそうだなっ」
慌てる鬼道の腕を掴んで垂れたアイスを舐めとる。そうすれば鬼道は顔を真っ赤にして慌てて腕を引こうとするが鬼道の腕を掴んだ手に力を入れて阻止する。
手の甲や指の先、指の間と1つ1つ丁寧に舐めあげる。その間も言葉にならない声を漏らす鬼道の顔を下から見上げるとゴーグル越しに見える欲情した瞳。
「なに鬼道ちゃんこんな事で欲情してんの?」
「ッ、誘ったのは、お前だからなっ」
そう言って立ち上がって、ベンチに座ったままの俺に覆いかぶさりキスをする。鬼道の持っていたアイスがベチャリと音をたてて地面に落ちた。
「ん、ふ、ハァ、」
鬼道の舌が荒々しく口内を蹂躙する。
さっきまで冷たいものを食べていたからだろうか、いつもより鬼道の舌が熱く感じる。その熱に煽られて俺も熱心に舌を絡ませる。


熱くて熱くて溶けそうだ。

いっそこのままー、


「おかあさーんアイスがぁー」
ふいに広場に女の子の泣き声が響いた。我に返った鬼道が勢い良く体を引く。流石に俺もこれはヤベェと思って口端に垂れる唾液を拭う。野外である事をすっかり忘れていた。

幸いここは陰になった場所で存外遠くの方にいた女の子と母親にはこちらは見えていないようだった。
ホッと胸をなで下ろし立ったままの鬼道を見ると安堵している赤い瞳と目が合う。
「……あっっちィな」
「……そうだな」
緩慢な動きで鬼道がベンチに腰を下ろす。落ちたアイスがじわじわと地面に染みを作っていく。

「ひでェ…」

手元に視線をやると俺のアイスも溶けて腕に何本もの白い線を作っていた。




おわり100814
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