※不動さんの過去捏造
※嘔吐表現アリ





窓の外では土砂降りの雨が降っており、雨粒がアスファルトにぶつかる音が絶えず鳴っている。不動は灯りも付けないで薄暗い部屋でベッドに顔を埋め、必死に何かに耐えていた。皺ができる程シーツを握った指は力の込めすぎで白くなっている。
「うぅっ…うっ」
シーツの隙間から押し殺すようなくぐもった声が漏れる。

不動は何かに耐えている。その何かとはまだ幼かった自分が受けた耐え難い屈辱そして惨めさ。普段は心の奥底に押し込んでいるそれが時折激しい怒りの感情になって腹の底から湧き上がってくるのだ。
声を上げ、言葉にも出来ないそれを叫びそうになる衝動をシーツを握り締めることで逃がす。
「コロスコロスコロスコロス…」
しかしそれでもってしても怒りの感情は消えない。それどころか、それはますます不動自身の心を焼き爛らせていく。

暗くて狭い四角の部屋。

乱れたシーツに散らばる紙幣。

上から下卑た笑いを浮かべる複数の、男達。

見下ろされる幼い自分ーー。


「うっ…ぐっ!」
ベッドから飛び降りる。洗面所へ駆け足で向かう。飛び込むように洗面台に顔を埋めて胃からせり上がってきたものを吐き出す。一度吐き出すが吐き気は収まらない。
何度か繰り返し胃の中が空になった頃に吐き気はようやく引いていく。水で口の中を洗い流し、水が勢いよく出続けるのもそのままにずるずると壁に背を預け床に座り込む。
俯いて虚空を見る不動の目には未だにぐるぐると怒りの炎が渦巻いている。


もっと、もっと力が欲しい。何もかもを屈服させる力がーー。

雨はまだまだ止みそうになかった。




100718
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