好き好き好き
「いてぇよ」
大好きなんだ不動お前が
「苦しいっつの」
ぎゅうぎゅうと不動を抱きしめる腕にさらに力をこめる。

ぎゅうぎゅう
二人の間に隙間なんか無くなってしまえ。そう思いながら不動を力一杯抱く。
「ほんとにてめぇは犬みてぇだな」
そう言って花のようにふわりと笑う不動。不動の腕が俺の背中に回り俺をギュット抱きしめた。
嬉しくなって俺は不動にちゅっと軽く口づけた。そうすれば不動は恥ずかしいのかうっすら頬を桃色にさせ瞼をきゅっと閉じ、俺の口付けを受け取る。
「あきお」
唇を離しやわらかく名前を呼んでやると体をピクッととさせ目を開きこちらを見る。
「…なんだよ」
不動が答えれば未だ仄かに染まった頬を撫でながら愛してる、と呟く。そうすれば不動は俯いてしまう。
しかし真っ赤に染まった耳が不動の今の状態を克明に物語っていた。
あきお、ともう一度優しく名前を読んでやるとしばらくして不動が顔をあげた。「ぉ、俺も幸次郎のこと、あい、してる」真っ赤に染まった顔で不動が小さな声で言う。だんだん声が小さくなり最後の方はひどく聞き取り辛かったが、それを正確に俺の耳が拾った。
真っ赤になった顔を隠そうと俺の胸に顔を埋める不動の様子がすこぶるいじらしい。たまらなくそんな不動が愛しくなって俺は俺の胸に埋めた不動の顔をあげさせて2回目のキスを落としーー…



「オラ!源田起きろ!」
バチッと頬に衝撃。そこからヒリヒリと熱が伝わる。熱の原因となった相手を見上げる。
「ふ、不動?…」
頬に手を当てさする。
「何涙ぐんでんだ、ぜんっぜんかわいくねぇの」
腰に手を当て俺を見下げる不動。

だんだん意識がはっきりとしてきた。
ここは教室でどうやら俺は居眠りをしてしまっていたらしい。教室がザワザワと騒がしいから恐らく今は昼休みなのだろう。普段なら居眠りなどしないが、そういえば昨日テレビでサッカーの試合を見ていて寝る時間がいつもよりだいぶ遅かった気がする。
そんなわけで珍しく居眠りをしてしまったわけだ。
つまり、さっき見た不動の可愛くいじらしい姿は夢の中の産物だったのか…。無言で肩をがっくり落とした俺に再度不動の一撃が入る。
「目空けたまま寝るなんて源田のくせに器用な真似してんじゃねぇよ。」
もたもたしてっと置いてくぞ、そう言ってドアの方へ向かう不動。
そういえば昼休みはいつも鬼道と佐久間と俺そして不動を含めた4人で部室に集まり昼食を取っていたのだった。
弁当を持って慌てて不動を追う。

できればもう少し夢の中の素直で可愛い不動を見ていたかったなぁ。なんて現実の不動の厳しい一撃を思い出し苦笑しながら教室を出る。

廊下に出ると急にグイッと斜め下へと頭を捕まれた。引っ張られた顔のすぐ先には不動の顔。キスされているのだと一瞬遅れて気づく。
「んぅ、ふぁっ…不動?!」
口を離した後、驚いて不動の顔を見る。
「寝言で勝手に人の名前呼んでんじゃねぇよ!バカ野郎!」
顔を真っ赤にさせた不動に臑を蹴られる。痛みに一瞬怯んだすきに不動はもう一度バカ源田っ、と怒鳴り走っていってしまった 。

前言撤回、やっぱり現実の不動が一番好きだ。夢の中の不動に謝り、顔を赤くさせたまま走り去ってしまった不動を追いかけた。




おわり100628
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