3 「亜由美遅いアル!!もう、私腹ペコで死にそうアルヨ。」 「遅いのは私じゃなくて、坂田さんよ。」 “怒るんだったら坂田さんにして”と、さつま芋の袋を持っている左手で坂田さんを指した。すると、“え、俺?”と、すっとぼけた様に坂田さんが言うものだから、私はさつま芋の袋で坂田さんのお腹辺りをゴスッと叩いた。それと同時に坂田さんの口から、“ふげばっ!”と声が聞こえた。しかし、私は心配はしない。だって、そんなに力強くやってないから。 「ざまぁみろアル天パ!」 「あ、亜由美さん。さつま芋ホイルに包むんで貸して下さい。」 「うん。お願いします。」 神楽ちゃんが坂田さんを貶している間に、新八くんに頼まれたさつま芋の袋を渡す。せっせと新八くんがさつま芋をホイルに包む作業をしているのを見て、私も新八くんを手伝おうと向けた身体が何故か動かない。そして、進まなかった。そな私に気づいたのか、神楽ちゃんは私に爆弾発言をした。 「そう言えば、亜由美。何で銀ちゃんと手繋いでいるアルカ?」 「…へ?」 ズズズズっと効果音が付きそうなぎこちない動きで後ろを振り向くと、坂田さんがニヤニヤとした顔で私の手をポケットから出した。まだ、私と坂田さんの手は繋がっている。坂田さんの手が大きいので、私の手は包み込まれている感じで外気にはあまり触れない。ポケットから出されても寒くはなかった。 しかし、この恥ずかしい状況はなんなのだろうか。 「もしかして亜由美。銀ちゃんと恋人になったアルカ?」 「…え?」 私が、坂田さんと、こい、びと…? 神楽ちゃんが言った“恋人”という言葉が、頭の中で何度も木霊していた。木霊が収まると、今度は意味を正確に理解したので私の顔がだんだん真っ赤になっていく。もう、坂田さんの事をまともに見る事が出来ず、その場から逃げる様に新八くんの所へダッシュした。ダッシュする時、もちろん坂田さんと手を繋いでいた手を勢いをつけて放した。同じく、人の温もりも無くなった。 一瞬寂しさが右手から来たが、それよりもまず恥ずかしさが勝っていた。 新八くんの元へ行くと、綺麗にホイルされたさつま芋がごろごろあった。後は、濡れた新聞紙を巻いて焚き火に入れるだけだった。私は新八くんと一緒に、新聞紙を巻く作業を手伝った。急に手伝う私を不思議に思ったのか、新八くんは私を心配しながらも核心を突いてくる。 「どうしたんです、亜由美さん?銀さんと何かありました?」 「…な、何でもないです。」 私はどうも言えずに、まだ赤い顔を下に向けた。 その様子を見ていた坂田さんたちは、私を見ながらこんな会話をしていたなんて思わなかったが。 「銀ちゃんフラれたアルナ。」 「ちょ、何でそんな悲しい事言うかなァ!今銀さん、いきなり手を放されてブロッキンハートしちゃってるのに!!」 「男なら当たって砕けろアル。」 「もう砕けてるのに、次は粉々になれってか!」 (亜由美も銀ちゃんもホント馬鹿アルナ。) |