キンカン




「銀ちゃーん、ここ痒い。」

「はぁ?どうしたの。」

「見て、これー。」



痒くて仕方がない足を、ソファに横になっている銀ちゃんの顔の近くにくるように見せた。すると、じっと見て一言他人事の様に言った。



「うわーパンパンに腫れてるじゃん。」

「かーゆーいー。」



もうどう仕様もなくて、思いっきり掻いた。嗚呼、んー何とも言えない快感。痒い時に掻くと気持ち良いよね。しかし、その快感も直ぐなくなった。それは、銀ちゃんに掻いている手を掴んで止めたからだ。だから痒いんだって、銀ちゃん。



「ああ!お前掻くなって!!それ蚋だろ。」

「ぶゆ?」

「蚋は普通の蚊と違うの。冷やすか、キンカンで消毒しなきゃ腫れ治まらねェよ。」

「何でキンカンなのー?沁みるから嫌だ。」

「あ?そりゃー、キンカンはアンモニアで出来てるから、それで中和させんだよ。」

「…おしっこ?」

「おい、普通に言うなよ。こっちはオブラートに包んでいるのにさァ!」



いや、だってアンモニアっておしっこじゃん。当ってるじゃん。でもやっぱり沁みるの嫌だし。ここは、冷やすを選択でしょう。



「…じゃあ、まず冷やしてくる。」

「キンカンは直ぐ効くぞ。」

「……、おしっこ。」

「まだ言うか!」



無理やり足首を掴まれ、キンカンを塗ってもらいながらふと考えた。銀ちゃんって、意外と物知りなのかもしれない。だって、“ぶゆ”っていう蚊しらなかったし。蚊ってそもそも種類なんてものあったんだ。しかし、痒いし暑いしやっぱり沁みたし“ぶゆ”なんて嫌いだぁー!





アンモニア:アルカリ性
蚋or蚊等の毒:酸性


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