ちびっこ帰る




最後はあゆみのお陰で、多串くんと総一郎くんを説得してくれた。俺の話は聞かないくせに、あゆみの時だけ顔を緩ませしっかり聞いていた事に少々苛つきを覚えた。そして、結局しぶしぶあゆみが万事屋に帰る事を許した。つーか、許可がおりないと駄目な訳?こーゆー養子的な子ってさ。
まぁ、許可がおりてもおりなくても俺はあゆみと一緒に万事屋へ帰るけど。

しかし、一番うるさかったのはゴリラだった。



「うぉぉおおおっ、あゆみちゃんよがっだなぁ!」



うおんうおんと何かのサイレンの様に、屯所入り口で泣いていた。五月蝿くて俺は耳を塞ぎながら、あゆみとのお別れを見ていた。もう、後半何を言っているか分からなかったがあゆみは律儀に懸命に聞いていたようだ。しっかりと挨拶をするのは、こっちに来ても変わっていなかったみたいだ。



「うん!いさたん、おしぇわになりましたっ!」

「あああっ、あゆみちゃんがいなくなると屯所内が静かになるなぁっ!いつでも遊びに来て良いからっ!お妙さんと一緒に!!」

「おいゴリラ!あゆみをだしに使うんじゃねぇよ!!」



ゴリラが最後にあゆみの頭を撫でた後、真顔でそんな事を言うもんだから突っ込んじまった。ゴリラとお妙の関係を詳しく知らないあゆみは、笑顔で返事をしていた。嗚呼、ゴリラに明日はねェな。

自然にゴリラの未来を悟っていた俺に、あゆみが俺の着物の裾をくいっと引っ張って俺を呼んでいた。



「どうしたァ?あゆみ。」

「あゆみ、またあしょびにきていい?」



はっ?

え、何を言っちゃっているのかなァ?え?これ許さないと、あゆみに嫌われるフラグじゃねェかよ!本当は許したくないけど、けどけどあゆみのチワワの様なウルウルした瞳で見つめられたらもうアウト。



「……す、少しだけなら。」



負けてしまった。

しかし、許しを得たのが嬉しかったのか可愛い笑顔を溢して“ぎんたんだいしゅき!”と言った。あれは、反則技だよ。




「いさたん、としたん、そうたん!」

「またあしょびにくりゅかりら、よろじゅやにもあしょびにきてね!!」

「はぁっ!?え、マジ!」



あゆみの爆弾発言に、俺はつい叫んでしまった。アイツらは、あゆみに誘われて嬉しそうな顔をしている。いや実際本当、見たこともないくらい嬉しそうな顔してる。一方あゆみは、俺がまた駄目発言をしたのかと思ったらしく不安げに俺を見ている。



「だめなのぉ…?」



…っ!
こてんと、首を傾げながら言うあゆみ。ああああ!もぅ、それは反則だって言ってるでしょ!ちきしょー!これ駄目だって言ったら本当嫌われるぅ!もう、銀さん嫌いとか死んじゃうからァ!マジで。
てか、そこの三人!人が凄い悩んでるのに、ニヤニヤすんじゃねェーよ!!…たくっ、今回だけだかんな本当!



「いや、駄目じゃ……な、けど…駄目なん……嗚呼もう!良いよ!来て良いよ!!ただし、玄関までなっ!」



そう言って、あゆみの手を掴み万事屋への帰り道を行く。あゆみは、振り向きながら“またねぇー!!”と元気良くぶんぶん右手をアイツらに向けて振っていた。ちろっと後ろを振り向くと、アイツらもあゆみに手を振っていた。
あーあー、敵が増えちまったなァと思いながら仲良くあゆみと万事屋への帰り道を歩いた。


あゆみにとって久しぶりの万事屋を見て、あゆみは嬉しそうに笑った。万事屋の方を見ると、人影が2人程見える。よく見ると、神楽と新八だった。神楽が俺たちを見つけると、大きな声で叫びながら駆け寄って来た。新八も神楽に続く。



「あゆみーー!!探していたアルヨ、ずっと!」



俺たちに近づいたかと思うと、がばっと神楽があゆみに抱きついた。そして、“今までどこに行ってたネ!”と抱きしめながら泣きじゃくっている。新八も、“本当、見つかってよかったです。”と涙目になりながら言う、そして。



「「「あゆみ(ちゃん)、お帰り(なさい/アル)!!!」」」



やっと、あゆみが帰ってきた。

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