好きですなう




仕事が終わり、駅に着けた事にほっとしながら携帯を弄った。私が携帯を弄る時は、必ず最初に見る所がある。それは、お互いに忙しいのでここで何をしているか確認できる様にしようかと誘われたのがきっかけ。そのきっかけをくれたのが、今日が誕生日の坂田銀時である。

あ、あった。



“ あーヒマなう ”



今の時間は、最終電車がもう終わっている時間と言って良い程遅い時間だった。ヒマって、バイトはどうしたんですか。そのつぶやきからどこを見ても、坂田のつぶやきには誰もつぶやきをしていなかった。坂田が他の人に掛かれない様にしたか、誰もそのつぶやきに相手をしなかったぐらいしか思いつかない。何だか後者の様に感じるのは、私だけではないはず。

これはチャンスではないかと思う。
もうつぶやき投稿時間にはかなり遅いが、つぶやきなのだから関係ないだろうとポジティブ自己簡潔する事にした。これを坂田に言えば、お前どんだけポジティブ思考なの?っていつものおどけた声といつもの天パ具合で言うに違いない。



“ ねぇねぇ今なにしてるの? ”



まず坂田が起きているかどうか確認投稿して、ポチポチと連続して更新ボタンを押す私。坂田のつぶやきの投稿に、どれだけ期待しているんだと自傷じみた感じでクスリと笑う。すると、2分ぐらい経ったぐらいだろうか。つぶやきが投稿されていたのだ。ポチポチと更新ボタンを押す音が鳴り止む。私から見て右斜め端っこの席に座っているサラリーマンのおっさんは、この音にイライラしていたのか時々視線を感じた。
嗚呼、これが坂田の視線だったらどれだけ良いのだろうかと思う私はもう坂田銀時末期なのだろうか。もうフルネームで病名を考えている時点で駄目だろう。

さて、坂田のつぶやきは何だったか…。



“ そろそろ寝ようと思ってた ”



あ、まだ起きてた。
…ん?投稿早っ!気づくの早っ!!
まぁ、年中暇人ぐーたら心は少年甘党天パだからな。仕方がないんだ。うん、これが普通なんだ。
そう思って、更新ボタンを押すことが当たり前になってしまった親指がページを更新した。
すると誰かが坂田の後につぶやいたみたいだ。

あ。



“ 携帯ジャンプ読んでたなう ”



どうやら、私が坂田に悪口を言っていた事がバレていたらしい。しかも、後から取り繕っている感がバリバリ出ている。なうの使い方が変だよ、坂田。

今しかなよね、私。
早速親指を一生懸命使って、文を作る。届け私の想い!



“ 誕生日おめでとう!産まれてきてくれて、ありがとう! ”

“ おう!ありがとな!! ”



そして、私は次の文を入力した。卑怯だけど、私は坂田を目に前にして言う度胸はない。ポチッと、送信ボタンを押してまた更新ボタンを連打した。



すると、携帯がブルッと震えた。誰かから電話が掛かってきたらしい。画面を見ると、“坂田銀時”だった。私は、震えながらも通話ボタンを押し、恐る恐る携帯を耳にあてた。



「も、もしもし…?」

『亜由美!俺も好きだバカヤロー!!!』



少し怒った様な、でも嬉しそうな声が私の右耳に響いた。その後から、ごにょごにょと“俺が先に言いたかった”とか“誕生日ぐらい一緒にいろよ”とか私が元気になるような言葉が次々と坂田は嘆いていた。

正直、恥ずかしいけど嬉しくて顔が緩んでしまっている。でもそんな貴方が好きだから、私はもう一回伝えます。



「本当に誕生日おめでとう。ありがとう、大好きよ銀時!」

『!…ちょ、名前は反則だろ!!こっちはなぁ!大好きじゃねェんだよ!!!』



え?そう聞き返す前に、坂田が少し呼吸をしたのが分かった。



『愛してるんだよ、亜由美。一生離さないから。』

「……うん!」



HAPPY BIRTHDAY!


『という事で、亜由美が俺へのプレゼントだよな。』

「へっ?」

『明日覚悟しとけよ。』

「ええええ!」


- 10 -