きらきら、きらり。




そっと、私は銀ちゃんの傍からするりと離れた。
銀ちゃんは歩くのを止めた私に気づかず、どんどん先へ行き人ごみに呑まれていった。嗚呼、まるで夢みたいだ。私だけ取り残され、銀ちゃんだけがどんどん先へ行ってしまう。私の足は鉛の様に重かった。いや、これは夢ではないのだ。現実に起こっている。
しかし、足は非常に重かった。


まるで、私だけ時が止まっている様だった。


空を見ると、上手く飛べない鳥が飛んでいた。白い雲は風に乗って、形を変えながら流れている。太陽はただこの地を明るくしている。それがさも使命であるかの様に。大人はさっさと人ごみの中を歩きわけ、子どもはきゃっきゃっと騒がしくどこにぶつかってもかまわずに走り回った。


嗚呼私の足はまだ重い。動かない。
もう、銀ちゃんの頭しか見えない。


銀ちゃんの先往く後ろ姿を見た。
銀色の髪が太陽の光によってきらきら、きらりと輝いていた。銀ちゃんの存在は眩しい。



嗚呼そうか。私は逃げたんだ。

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