しんせんぐみ予感




俺は、塀の向こう側に飛んでいったシャトルを取りに行った。しかし、塀の外に転がっているはずのシャトルが道端にはなかった。道端にいたのは、銀髪の天然パーマの変な着方をした着流しを着ている長身の男がいた。シャトルは上手い具合に、その男の髪に引っかかっていた。



「万事屋の旦那!」

「…ん、あ?」



その男は、坂田銀時。掴み所がないと局長たちが言っている人だ。

俺は、呼びかけながら旦那の近くに駆け寄った。俺の呼びかけに気づいてくれた旦那は、いつもの死んだ魚の様な眼がいつも以上に死んだ眼になっている顔で振り返った。俺は、そのやつれた旦那を見て驚いた。



「だ、旦那!どうしたんですかぁその顔!!」

「…あ?……嗚呼。」

「いや、嗚呼って言われても分からないですよ!一体どうしたっていうんですか?」

「……ジミーって、警察だよな?」

「旦那、山崎です。真撰組ですからね。」



旦那は虚ろな目で、変な事を聞いてきた。一体どうしたというのだろうか。あの旦那がこんなになった原因は一体…。



「聞いても分からねェかもしれねェが、聞いてくれるか?」

「聞くに決まってるじゃないですか。」



「そうか、ありがとよ。」っと、切なそうな顔で俺に礼を言う。でも、何となく聞いてはいけない気がした。それでも、俺が聞けばいつもの旦那に戻るんじゃないかと思ってしまった。だから、聞いたのかもしれない。結果的には。



「……7歳ぐらいの、…黒髪の女の子を探してるんだ。」

「えっ?」

「舌足らずでさ、…俺の事“ぎんたん”って呼んでさ。」



俺は、旦那の口から何故か思い当たる単語があゆみちゃんの笑顔を思い出させる。いや、違う違う。確かにあゆみちゃんは、7歳ぐらいで黒髪の女の子。局長や副長、沖田隊長……そして俺にも“たん”付けするが、いやまさか。

俺は早く確かめたいという気持ちが先走り、旦那に名前を聞いた。



「嗚呼、名前?」

「ええ、何て言うんです?」

「名前は、「ぎんたん!」…。」



聞き覚えのある声に俺は振り返った。
そこには、あそこで待っててと約束したあゆみちゃんがいた。もう一度旦那の方を見ると、小さく名前を呼んでいた。


嗚呼、やはりそうだったか。

- 14 -