よろずや見つける




あゆみが行方不明になって、今日で五日経った。あの時、ようやく数時間してから体が動き出し、あゆみを探した。新八も神楽も、今日まで毎日手当たり次第にあゆみを探した。だけど、それぞれ無収穫だった。

一体何処行ったんだよ、あゆみ。



俺は、あゆみを探すついでに行きたくもない真撰組の屯所前近くに来た。武装警察って言われているくらいだ。何かあゆみについて、情報を持っているかもしれない。そう思い、屯所に来ちまった。だけど、ゴリラや大串くん、総一郎くんに頼るのは気が引ける。どうせ軽くあしらわれるのが関の山。それか、馬鹿にされるかのどちらかだ。

そう思えば思うほど、屯所入り口を避けて屯所の塀を意味もなくぐるぐると歩いた。すると、ぱこーんと塀を越して何かが降ってきた。それが俺の頭に上手く乗っかって、取ろうと思った矢先に誰かに呼ばれた。



「万事屋の旦那!」

「…ん、あ?」



俺を呼んだのは、ジミーだった。どうやら、俺の頭にある奴を取りにきたっぽいな。しかし、ジミーは俺の頭に乗っている奴じゃなく俺の顔を指摘した。



「だ、旦那!どうしたんですかぁその顔!!」

「…あ?……嗚呼。」

「いや、嗚呼って言われても分からないですよ!一体どうしたっていうんですか?」



最初、ジミーが何を驚いて言っているんだろうと思った。だから、腑抜けた声を出し、ただ「嗚呼」とだけ一応言った。悪いなジミー。今の俺は、まともに言葉のキャッチボールが出来ない人間になっちまってるんだ。

…あ。ジミーなら、あいつ等より真面目に聞いてくれそうかもしれないな。
……出だしとして何て言おう。俺、まともにジミーと会話した事ないから分かんねェーや。



「……ジミーって、警察だよな?」

「旦那、山崎です。真撰組ですからね。」



あ、一応返してくれた。ジミー優すぃー。それに乗って、俺は続けて話をした。



「聞いても分からねェかもしれねェが、聞いてくれるか?」

「聞くに決まってるじゃないですか。」



ジミーは、聞く気満々だった。
ジミーの意外な反応に驚いたが、俺にとっては凄くありがたい事だったので、いつもの俺なら言わない礼を言った。
……何から話そうか。まずは、歳と容姿からか。



「……7歳ぐらいの、…黒髪の女の子を探してるんだ。」

「えっ?」



たったそれだけで、ジミーが反応した。これだけで反応するって事は、見た事あんのか?あーでもなぁ、これじゃー街中にいっぱいいるよな。他に特徴はアレしかないか。



「舌足らずでさ、…俺の事“ぎんたん”って呼んでさ。」



ジミーの顔は、少し険しくなった。嗚呼、コイツ知ってんじゃねェーの?だって、たん付けするのってそうそういねェもんな。だけど、まだコイツがあゆみの事を知っているとは限らないんだよな。さて、次は何を言おうか。迷っている俺に、ジミーは名前を聞いてきた。



「嗚呼、名前?」

「ええ、何て言うんです?」

「名前は、「ぎんたん!」…。」



俺はあゆみの名前をジミーに言おうとしたが、それは叶わなかった。俺の言葉に被さった声は、俺が一番会いたい奴の声だった。ジミーは驚いたのか、後ろを振り返りそして俺の顔を見た。
嗚呼、やっぱ知ってたんだ。でも、ありがとな。


やっと会えた。



「あゆみ。」

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