国に着くまで ある日、一台のバギーが走っていた。 バギーと言っても、空を飛べるわけでも光の速さで走る事は出来ない。出来るのは、ある国で発達した科学技術によって馬車より早く走る事ぐらいだ。そのバギーには、白色の着流しを着用し、髪の毛は珍しい銀色のアラサー(成人男性)だった。ちなみに武器は、木刀一本のみ。その隣には、白い犬とその白い犬を無言で足蹴にしている少女がいた。白い犬は、いつも楽しく笑っているような顔をしているがこれは単なる生まれつきであり、別に楽しくて笑っている訳ではない。目が悪いようで、眼鏡を着けている。そして、珍しくも人間の言語を理解し話す事が出来る。それから少女は、雪の様に白い肌を持ちいつも日傘をさしている。日傘は拳銃にもなる優れものだ。 「ギンちゃーん、まだアルカァ?」 「んな早く着く訳ねェだろ。俺たち、何処に行く当てもなく走ってるんだから。」 「ギン様、またそんな事を言って。また天人(山賊)に襲われてもしりませんよ。」 「新、何度言ったらそれ直るの?ギンさんで良いって言ってるじゃん。」 「そうネ。ギン様なんてキモイだけネ。」 「えっちょ、カグラちゃンンン!?」 「いや、設定上こうなっているみたいだから忠実に再現しようとして頑張って言いたくない台詞まで言っているんですけど。」 「え。そうなの新。」 「ギンさん。それ直してくれません?新八って言って下さい。」 「それなら、私もカタカナじゃなくてちゃんと漢字が良いアル。」 っと初めはパロディらしい出だしぶりでしたが、やはりこの三人がやってしまうと話が進みません。しかし、その時このぐだぐだな話に救世主が現れたのです。 早速気づいたのは、犬である新だった。 「ギンさん、あれ見えますか?」 「あ?…嗚呼、バッチリ見えるぜ。」 「あのオートバイ見たことあるネ!」 「そりゃーお前そうだろうよ。」 そう、つい最近コロシアムで戦ったばかりだった。 バギーから見えるオートバイには、綺麗な黒髪をポニーテールにしている少女が乗っていた。後ろには、荷物が両脇に付いている。一見、少年に見られそうだが十代半ばの少女だったりもする。少女の腰脇には、パースエイダー入りのホルスターをぶら下げていた。顔には、防寒帽子とゴーグルを着け、少し大きい茶色いコートを羽織っていた。 オートバイは、バギーと同じく空を飛べる訳でも光の速さで走る事は出来ない。出来るのは、ある国で発達した科学技術によって馬車より早く走れる事だ。ちなみに、人語理解が内蔵されているので人並みに話せる。 オートバイはバギーに近づいてきた。 「ギンさん、お久しぶりです。」 「嗚呼久しぶり、アユミ。」 「やはりアユミさんでしたか。」 「アユミ、久しぶりアル!」 少し頬を染めて、ギンたちに挨拶をした。しかし、以外にもオートバイは文句を言った。 「アユミー、もう良いでしょう?早くガソリンが飲みたい!このままじゃ、ストラップになっちゃう!!!」 「……スクラップ?」 「そうそれです!」 「お前も相変わらずな、タマ。」 タマは、科学知識が豊富なのに対し他の言葉を間違う癖がある。いつも直すのは、アユミだった。それは、いつでも健在らしい事がギンたちにはよくわかっただろう。 「ところで、何でアユミはいるアルカ?」 「そうですよ。何も僕たちと走り続ける理由はないはずです。」 「五月蝿いです、ダメガネ。」 「ちょ、タマさンンンンン!?さっきまでガソリン飲みたいって騒いでいたでしょう!?」 「黙れ、ダメガネ。」 「ダメガネ言うな!」 「で、どうした訳よ?」 「あっ、えっと…その。」 「早く言いなよ、アユミ。」 色々と外野が騒がしいが、先ほど染めたアユミの赤い頬が更に赤くなった。そして、意を決してギンに言った。 「お、お菓子あげますので、頭を触らせて下さい!!」 岩だらけの道のど真ん中で、バギーとオートバイにいる者だけが聞こえた出来事だった。 |