ちびっこ馴れる




あゆみが屯所に来てから既に五日が経った。俺の隣ですやすやと、可愛い寝顔で寝ているあゆみ。とても7歳とは思えないが、そこら辺の餓鬼よりは良い子だと俺は思う。
そう思うのは、手のかからない子だからかもしれない。


基本的に大人しいし我儘なんか言わない。


…あ、一回だけ我儘っぽい事を言ったかもしれない。
あれは、あゆみがいちご牛乳が飲みたいって言った時だ。

男所帯の屯所には、もちろんそんな甘い牛乳なんて飲み物はなくて、水や烏龍茶ぐらいしかない。“ない"という事にあゆみは落ち込み、それ以上何も言わずに水をちょびちょび大人しく飲んでいた。あゆみの背中はなんだか悲しそうだった。そんな姿を見た俺たちは、とてもいたたまれない気持ちになった。

次の日の朝、今まで屯所にはなかったピンク色の牛乳パックが冷蔵庫に入りきらないぐらいに沢山あった。それを見たあゆみは、目をキラキラと輝かせてコップ一杯、ごくんごくんと飲み干していった。飲んだ後のあゆみの顔は、本当に嬉しいのかにこっと可愛い笑顔を俺たちに見せてくれた。
その時、土方さんが鼻血が出ている事に気づいていないのか、鼻血を垂れ流しにしながらあゆみをじっと見ていた。近藤さんに至っては、「これ写真撮った方がよくねえっ!?」と、まるであゆみの親父の様にしていた。それはもちろん、姉(あね)さんと出来た子どもを妄想しながらの行動だ。ありえねェけど。



それ以降は何もない。普通の餓鬼は、餓鬼の前に糞が付くくらい鬱陶しい奴なもんだ。だが、あゆみは違う。

そんなあゆみだからこそ、俺は引かれちまったようだ。



「そーた、ん?」


考え事をしていたら、いつの間にかあゆみが布団から出て起きていた。



「おはようごじゃいます、そうたん!」

「おはよ、あゆみ。」



あゆみは可愛い。
それは、容姿だけじゃない。

まだ眠そうなのに、俺たちの行動時間帯に起きてくれている。それも誰も何も言わないのにだ。それに、怖いはずなのに誰にでもしっかり挨拶をする。
こういう所が可愛いと思えるのだ。



俺たちは着替えを済ませて、朝食を食べに食堂へと向かう。とたとたと俺の前を少し歩く後ろ姿は癒される。

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