初詣で




12月は楽しいクリスマス会を過ごし、年を越すために大掃除をし、お節の準備をして、今年最後に皆で年越し蕎麦を食べた。

振り返れば、大掃除は頑張ったかなと自分を誉めてみる。普通は当たり前の事だけど、銀さんたちに任せてしまうととんでもない事になる。
神楽ちゃんは、掃除をしているのに不思議と何かが壊れていたりする。銀さんはというと、お登勢さんに貯まっていた家賃を今年中に払えと言われて、仕事に出ている。危うくたまさんに、アフロにされそうになっていたっけ。そして、一番まともそうな新八くんでさえ、二人が絡むとやる事なす事全てが空回りしてしまう。


と言う事で、私一人万事屋に残って大掃除をする事にしたのだ。神楽ちゃんにはごみ出しと定春の散歩を頼み、新八くんにはお節料理の材料を買ってきてもらう事にした。

一人は大変だったけど、万事屋が壊れずに済んだので良しとする。



そんな事を、年越し蕎麦を食べた器を洗いながら思い出していた。
この一年間ひやひやした時もあったけど、結局は楽しかったとしか言い表せない。しいて言うならば、幸せかな。



「亜由美ー!カウントダウン始まるネ!!」

「えっ、嘘!?」

「亜由美さん、早く!あっ、5!」

「皿洗いなんか良いから、4!」

「ちょっ、ま!3!」

「セーフだな、2!」

「「「「いーちっ!!!!」」」」



皆でカウントダウンをし、テレビ画面では花火が夜空に輝いた。実況中の結野アナが、「あけましておめでとうございます!」といつもの笑顔で挨拶をした。
私たちも、もちろん挨拶をした。



「亜由美!初詣に行くアルヨ!!」

「えっ、今から!?明日じゃないの?」

「年明けに行くのが初詣ネ。だから、今行くのが正しいアル。」

「ただ屋台に行きてェだけだろ?」

「神楽ちゃん好きですもんね。確かに初詣は始まってるけど、今行けるなら行っちゃいましょうか。」

「んー…、じゃあ折角だし行こうか!もちろん、銀さんもね。」

「え、俺も?」

「当たり前でしょ。ねー神楽ちゃん!」

「ネー!」

「たく、仕方ねェなァ。」



「きゃっほぉおおい!」ととっても喜んだ神楽ちゃんは、愛用のポシェットを持って準備万端だった。それを微笑ましく思いながら、私は先程カウントダウンのお陰で、中途半端になってしまった洗い物の存在を思い出した。



「三人は先行っててよ!私、まだ片付けとかあるしさ。」

「亜由美、つれないネ。」

「亜由美さん、行きましょうよ。」



私は、三人を先に行かせようとしたがブーイングが起こった。それが意外で、驚いてつい銀さんを見てしまった。すると、私を連れ出そうと神楽ちゃんと新八くんが背中を押した。私の目の前には、銀さんと銀さんの右手が差し出されていた。



「ほら、亜由美。一緒に行こうぜ?」

「…もう。今日だけだからね!」



銀さんが出してくれた右手を左手で掴み、万事屋の玄関を出た。


初詣では、皆と一緒に。

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