ちびっこお留守番 あゆみが万事屋に来て一週間が経った。たった一週間なのに、もう前からいたのではないかというくらいに、あゆみは万事屋に馴染んでいた。 これ、あゆみがいなくなったら万事屋成り立たないんじゃねェーの?まっ、そんな事は起こらねェー起こらねェー。だって俺がついてるしっ! そんな事を、あゆみを足の間に座らせながら考えていた。俺の手であゆみは遊んでいる。 うん、いつも可愛いなァコノヤロー。 あゆみで和み中の俺に、久しぶりに一本の電話が来た。きっと依頼人からだろう。 近くにいた新八が電話を受ける。やはり依頼だったらしく、新八は一人意気込んでいる。 「行きましょうよ!久しぶりの依頼ですよ!?」 「えー、俺あゆみといーたーいー。」 「今日は日差しが強いアル。」 「いやいや!アンタらそれで良いのか!?」 「別にィー、俺あゆみがいれば生きていけるもーん。」 「私もあゆみと定春がいれば十分ネ。」 「あ、訂正。俺あゆみと糖分とジャンプがあれば良いや。」 「ずるいヨ銀ちゃん!私も酢昆布追加ネ!!」 「この駄目人間がっ!僕だってお通ちゃんがいればっ!!!」 新八も神楽も俺も、結局はぐだぐだ生活に浸り過ぎて何もやる気が起きないでいた。いやー、最近仕事なんてなかなかなかったからな。しかし、やる気とは案外簡単に出てくるものだ。 「……だいたい、お金がなくてあゆみちゃんの歓迎会やってあげられないの「よしやろう!銀さんお仕事する!」…。」 新八の無言の、本当にやる気あるんですかぁ?っと言う目を横目にあゆみを立ち上がらせる。 「歓迎会は、すき焼きが良いアル!ねーあゆみ?」 「しゅきやき?」 「よぉーし、歓迎会はすき焼きに決定だァア!!てめェら、気ィ抜くんじゃねェーぞォ!」 「「おーっ!!!」」 「……おーっ。」 そんな事でやる気を起こした俺たちに、新八はやや引き気味だがそれでもやる気はある。つーか、仕事って危ないじゃん。イコール、あゆみを連れて行けない。だって、危ないもの。もし怪我や事故でも起きたら嫌だし。 「って事で、あゆみはお留守番なっ!」 「おりゅしゅばん?」 こてんと首を傾げながら、俺の言った事を復唱するあゆみ。何これ。超可愛いんですけどォ! 「あゆみちゃんには、危ない事だらけだからね。」 「仕事は遊びじゃないネ。遊び半分で行くと怪我するゼ。」 「いや、それ一番アンタに聞かせたい言葉だから。」 「あゆみは、定春と一緒にお留守番ネ。」 「さだはりゅとおりゅしゅばん?」 「そうだぞー。お留守番よろしくな。」 俺はあゆみの頭をポンっと置き、いつもの様にわしゃわしゃと撫でた。あゆみがお留守番と言う意味を知らずに、ポカンとしているとは分からずに。そして俺ら三人は、仕事をする為に玄関に行った。 あゆみは、俺たちの後を着いてきた。そして、俺たちを見上げる。 「ぎん、たん?」 「行ってくるな。」 「すき焼き楽しみに待つアル!」 「良い子にして、待っていて下さいね。」 それが、あゆみとの最後の会話だった。 「ぎんたん。…ぎんたあん!」 「んっ?」 誰かに呼ばれた気がして振り返った俺。しかし、誰も俺を呼ぶ様な人たちはいなかった。何だろ。何だかいやーな予感がしてならねェな。…早く仕事すませて帰ろう。そうだ、そうしよう。 「どうしたんですか?銀さん。」 「いやぁ、何でもねェよ。おら、さっさと行くぞ。」 俺たちは仕事へと足を速めた。 |