other2 | ナノ


▼ 無口不良×平凡3

リクエスト


――――――
From郁弥
Sub(non title)
俺、実は好きな人がいるんです
――――――
郁弥から送られてきたメールに、俺は頭を悩ませた。


メールでも相変わらず言葉が少ねぇ俺の言葉を、郁弥は上手く読み取ってくれる。
最近では友達のように思ってくれているのか、郁弥との距離が少しずつだが近付き、思わず顔をニヤつかせちまう毎日。
そして前と変わった事と言えば、月曜の5時間目に郁弥が寝なくなった。
ウトウトし、頭を揺らして眠気と戦う郁弥を見れなくなったのは残念だが、その代わり、丸々その時間は郁弥の姿を見れるようになった。
前に1度だけだが、真剣に前を向く目が俺の方へと向けられたことがある。
ほんの数秒間、バチリと目が合い、驚き咄嗟に俺から視線を外したが、今思えばあの時に少しでもニコリと笑っておけばよかったと後悔した。
まぁ意識して表情動かすなんて高度なこと、俺にはできねぇがな…

少しずつだが確実に仲良くなっているが、今だに俺が『阿久津有希』だとは言い出す事ができねぇ
もし知られたら怖がれるかもしれないという不安や、そもそも俺は郁弥に性別すら伝えていない。
口調もなるべく男だと勘付かれねぇように敬語を使っている。
だから俺が男だと知ってガッカリし、連絡が途絶えてしまうかもしれないという不安で、会うどころか、正体すら明かせていない。
何度か郁弥の方から『会おう』とは言ってくれているが、俺を見た郁弥の反応が怖くて、俺は前へと進めていない。

そんないつまで経っても前へと進めない俺へ、まさかの郁弥からの告白に、俺は膝から崩れ落ちた。
郁弥がこうやって好きな人がいると明かしてくれたのは、少なからず信用を置いてくれているから
けれどその信用故に、俺はかつてない程、落ち込む。
自分に何が出来たかと聞かれれば何もねぇが、それでも俺は…

郁弥からのメールになんて返そうか、悩みに悩んだ末
ただただシンプルに『頑張ってください』としか返せなかった。
そして次に送られてきた、『明日には告白するつもりです』という返事に深く重いため息をついた。





朝起きて、昨日の事を思い出し、何とも言えない気持ちに苛まれた。
苛立ち、落ち込み、不安…そして後悔。
泣く子も黙る狂犬なんて言われている俺らしくもないあれこれに自分自身呆れた。

何もやる気が起きず、学校もサボろうかと考えたが、郁弥の顔が頭によぎり、郁弥の好きな奴を見るだけだと、重たい腰を無理矢理持ち上げた。



見るからに不機嫌な俺に、千崎は「あっくんてばどーしたぁ?」と心配そうに声をかけられたが、それに俺は何も答えなかった。

朝から下駄箱から紙くずが出てくるわ、郁弥は好きな奴に告白するらしいし…最悪だ

1日中不機嫌オーラを出し、唯一の楽しみである月曜の5時間目も、心ここに在らずのまま受けた。





誰もいない放課後の教室で頬杖をついて外を見る。
そこから見える景色は、俺の見ている世界と全く違って見える。
郁弥がいつもこの景色をみていると考えるだけで、俺の見ているこの景色がキラキラと輝いた物に見える。

郁弥の好きな奴を見るためにここまで来たが無理だった。
校舎裏へと向かう郁弥の後ろ姿を見た瞬間、『相手を見てどうすんだ』という声が聞こえた気がした。
郁弥の好きな女を殴るか?脅すか?犯すか?
最低な考えしか浮かばねぇ自分にハッと乾いた笑いが出た。

きっと今頃郁弥は…
最初は見ているだけで楽しかった
見ているだけで幸せだった
それがいつからこんなに俺は強欲になっちまったのか…

多分もう告白が終わって帰った頃だろうなと考え無意識に深いため息をついた。

これでよかったんだ…
そう自分自身に言い聞かせることしか出来なかった。







「…あっ…いた。」
そろそろ帰るかと重い腰を上げようとした時、閉められていた扉が突然開かれた。

「ちゃんと来てくんなきゃ困るんだけど。…まぁ帰ってなかったし、いいや」
「な、んでお前が?」

こちらを見て『ん?』と笑顔を浮かべた郁弥。
扉からこちらへと向かって歩き、今は何故か俺の目の前に郁弥が立っている。
顔は確かに笑っているが、何処か怒っているようにも感じる。

「なぁ…俺、下駄箱に手紙入れたよな?『放課後校舎裏に来てください』って。この学校の校舎裏って告白の場所でそれなりに生徒の間では有名だよな?なんで来ない訳?あっくんは俺の事嫌いだった?」
「…いや」
訳がわからねぇ…
なんでここに郁弥が…
なんで郁弥が俺を『あっくん』と呼んでんのか…


「あっくんてば、今ごちゃごちゃ余計な事考えてるだろ?
…あっくんって口数少ないけど、以外と頭の中では色々考えてるよな。
はぁ…言いたいことはたくさんあるけど、これだけはちゃんと耳をかっぽじって聞いててな…」

「俺はあっくんの事が好きです。…だから、俺をちゃんと見て」






補足

prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -