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▼ 無口不良×平凡4

リクエスト


あっくんは相変わらずのあっくんだった。
俺からの告白に、数秒置いてから「ああ……」と呟いただけであとは何も言ってくれなかった。
だけど今はそれでいい。
あっくんは何も言ってくれはしなかったが、いつもは表情が動かないあっくんの驚き戸惑った顔が見れただけで俺的には満足だった。
多分まだまだあっくんからの『好き』という言葉はもらえることはないだろうけど、いつかは言ってほしい。そしてあっくんの気持ちをあっくんの言葉で教えて欲しいな。

ただ今はそんな急ぐ必要もないし、ゆっくりあっくんの成長を見守るのも楽しいかもしれない。
少しずつ俺によって変わっていくあっくんが今から楽しみで仕方ない。






4月の後半から始まったあっくんとのメッセージのやり取りは、告白に至るまでにいつの間にか2ヶ月も過ぎており、気が付けばテスト期間になっていた。
やっとあっくんに堂々と会いに行けるようになったのに、テストのせいであっくんとの初デートが何も楽しくない勉強デートになってしまった。
……嘘。あっくんがいるだけで勉強デートだとしてもめちゃくちゃ楽しいんだけどね。
だけどそこまで頭の良くない俺にとって勉強自体はそんなに面白いものではなかった。
最初は頑張って取り組んでいたものの、直ぐにわからない問題にぶち当たり、早々に解くのをやめてしまった。
そんな俺とは反対にあっくんはスラスラとテキストの問題を解き続けていた。

「あっくんって頭いいんだね。勉強好き?」
ファミレスの机に頬杖をつきながら向かい側の席でテキストを解いてるあっくんを見つめるとこちらに視線を向けたあっくんと目が合い、少しだけあっくんの口角が上がった。

「お前は勉強が嫌いなんだな」
「嫌いではないよ。ただ途中でわかんなくなって飽きる」
そのあとあっくんからの返事はなかったが無言でテキストを俺にも見やすくし、「わかんねぇのどこ」と一言だけ呟いた。
これまでの2カ月間、メッセージの相手はどんな人なんだろうと想像していたよりもずっとずっと優しい現実のあっくんに俺はニッコリと満面の笑顔を浮かべた。

「ココとココと……あとココ!」
また少しだけあっくんの口角が上がった。




その後もわからないところでつまづいていると直ぐにあっくんが気付いてくれ、「どれ」と解き方教えてもらったおかげでテスト勉強がスイスイと進んだ。

「今日はありがとう、あっくん」
「ああ……」
素っ気ない言葉にも思えるが、あっくんなりの返事だと思うと愛しさがある。
ファミレスから出て途中まで同じ道だったが、とうとう分かれる道に着いてしまった。
やっと普通に会えるようになったのに、今日はもうバイバイなのかと切ない気持ちでいっぱいになる。

「また明日」とシンプルに別れを告げ、進もうとしたがその前に「待て」とあっくんに止められた。

「あっくん?」
「……夏休みになったら、どっか行こう」
まさかのあっくんからの誘いに驚き、動けなくなってしまった。

「……うん、うんうんうん!行こう!テスト終わったらたくさんたくさん遊びに行こう!あっくんの話聞きたいし、あっくんと出掛けたい!!」
「ああ」
表情は動かなかったが何となくあっくんも嬉しそうにしてるのがわかった。
嬉しい。あっくんから誘ってくれるなんて……


「俺、夏休み補修にならないようにテスト頑張るから!」
「ああ」
俄然やる気になった俺はあっくんが見えなくなるまで後ろを向いて「頑張るからー!」と叫びながら歩いた。
帰ってからも興奮は治らず、頑張る宣言のメールを送った。

――――――
Fromあっくん
Sub(non title)
頑張れ
――――――
そうして返ってきたあっくんからのメールはもう前みたいに敬語じゃなくなり、今じゃ現実のあっくん同様でまた俺は笑ってしまった。







補足

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