短編2 | ナノ


▼ 俺様(溺愛)×平凡(ワガママ)

「カイはどんな子がタイプ?」
「うるせぇ。お前に言う必要なんかねぇだろ」
「そんぐらい教えてくれたっていいじゃん。カイって俺様だし、やっぱそれに従ってくれる子じゃないとお前直ぐに相手の子捨てそうだよな」
クラスの女子達が2人の会話に聞き耳を立てているのがわかりモヤっとする。

「あれだよな。祐介(ゆうすけ)は吉野(よしの)とは反対でお前が大人しくて自分のことは二の次だから、引っ張ってくれたり多少強引な子との方がお似合いだよな」と2人の会話を聞き、友人がそう話を振ってきた。

「……そうかなぁ?確かに推しには弱い方だけど……」
「ほらぁー!」
吉野ほどではないけどやっぱ男は強引で俺様なぐらいがちょうどいいんだよ!
そういう男らしい方が女の子って好きだよなぁと語る友人に「そうだねぇ」と適当に流した。






「祐介?」
「うるさい!向こう行って」
チラチラとこちらを伺ってくるカイに強く言うが向こうに行く気がないようで隣に座ってきた。

「これ、祐介好きだろ?今日祐介と一緒に居られるから少しでも祐介の喜んだ顔見たくて買ってきたんだ。食べてくれないか?」
前に一度好きだと言ったお菓子をカイは律儀にも覚えており渡してくるが、プイッと僕は反対を向いた。

「いらない」
「祐介……」
頭も運動神経も顔も良く、完璧で俺様な吉野カイは僕といる時は全然俺様なんかじゃない。
むしろ僕に従順だ。
そして大人しいと言われる僕も、カイといる時はワガママになってしまう。
だけど最初から僕はこんなワガママだったわけじゃない。
全部カイが何でもかんでも僕を甘やかすからこうなったんだ。



1年前、人気者なカイに放課後呼び出され告白をされた。
何かの冗談だと思ったが驚いて声が出ないでいる僕に「どうか付き合ってほしい。お願いだ。なんでもする!」と必死に懇願された。

あの吉野カイが!?と戸惑ったが、カイの押しに負け僕はカイと付き合うことになった。
付き合ってからカイはいつも外で見せてるような仏頂面ではなく、ニコニコととろけそうな笑顔を僕に向けてきた。
そして「祐介は可愛いな」と言ってきた。
最初は何も言い返せずにいたが何度も言ってくるから「恥ずかしいからやめて」と言ってみたが、事あるごとに「照れてる顔も可愛い」「驚いてる顔も可愛い」と言ってきた。
やめてと言ってるのに何度も言ってくるから怒って「うるさい、うるさい、うるさい!!」と叫んだが、その時もカイは「怒った顔も可愛い」と言ってきた。
そこから僕を褒めてばかりいるカイに反発しているうちにワガママを言うようになり、そのワガママもカイは当たり前のように受け入れるからさらに僕はワガママになっていった。



「祐介の可愛い顔が見れないなんて耐えられない。お願いだからこっち向いて」
「平凡な僕が可愛いわけないじゃん。カイって目おかしいよ!」
「俺の目はおかしくなんてない。いつでも祐介は可愛くて俺は祐介から目が離せないから、目が悪くならないようにブルーベリーも食べている」
もぉ、何言ってんだか!何がどうなればこんな平凡顔の男が可愛いって発想になるんだよ!
イケメンなカイの周りにはいつもたくさんの可愛い女の子がいて、僕よりもそっちの子達の方が間違いなく可愛いでしょ!

「……きっと明日からクラスの女の子達はみんなカイの恋人になりたくて、優しいおしとやかな子達になるんだよ。可愛い女の子が優しくておしとやかなんて最強じゃん」
チラッとカイを見ると理解していないのか不思議そうな顔をする。

「僕よりも好きな子出来ちゃうかもね……」
「そんなことあるわけがない!!」
カッと目を見開き否定するカイに僕は無意識に頬が膨れて行く。

「いつものカイは俺様だし、やっぱりカイは自分の言うことに従ってくれる子の方が好きなんでしょ」と再び僕はそっぽを向いた。

「昼間の話を言ってるのか?俺のタイプは祐介だ」
だから祐介以上の人なんているわけがない。
そのことで拗ねてたのか?……本当に祐介は可愛くて困る。
どうしてそんなに可愛いんだ。俺が祐介以外を好きになるわけがないだろ?
と、そう言ってくるが納得できない。

「僕は可愛くない!それにそんな根拠ない理由だけじゃ信じられないし、本当はワガママな僕に愛想つかせてるんじゃないの?」
そう言うと、後ろからギュッと抱きしめられた。

「祐介は全然ワガママなんかじゃない。むしろ俺はもっと祐介にワガママを言って欲しい。俺は唯一祐介のワガママを言ってもらえる相手になりたいんだ」
「……もうなってんじゃん」
小さい声で言ったが、僕を抱きしめているカイにはきっと聞こえていたはずだ。

「あー!馬鹿らしい。もういい。僕に買ってきたお菓子あるんでしょ?頂戴」

こんな平凡男にカイはこうもベタ惚れしている意味がわからない。
ただでさえカッコいいのに、そんなカイに優しくされその上甘やかされたことで僕はカイのことを好きになり、今ではもうカイがいるのが当たり前になってしまった。
だけどいつかカイに飽きられてしまった時、僕はどうすればいいんだろう。
「可愛い」としか言わないカイはいまだに僕のどこが好きなのかわからない。
だからどうやってカイを繋ぎとめればいいのかわからない。

僕はいつ飽きられて、いつ捨てられるのかすらわからなく、そして引き止める方法もわからない。
だからカイとの毎日はとても怖い。



「可愛いよ祐介。美味しい?」
「……美味しい」







補足

prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -