短編2 | ナノ


▼ イケメン→平凡×不細工

※胸糞話です。閲覧注意。



「まーた告白してきた子振ったんだって?今回の子は可愛いって有名の新倉さんじゃん、一体何がダメな訳?」
「いや別に…何が悪いとかないよ」
「えーー!!!何も悪くないのに付き合わないの?涼弥(りょうや)くんってば贅沢者ー」

……
「二股かけてる裕司(ゆうじ)には言われたくないな」
え!?なんで知ってんの?…いやーだってさー、可愛い子に告白されたら断れないじゃん?
とペロッと舌を出す裕司に、俺は呆れた笑いが出る。





人間に勝ち組と負け組があるとするなら、俺は生まれた時から勝ち組だった。
生まれ持った見た目の良さや、何でも卒なくこなしてしまう能力。
そしてそんな俺の周りには、俺と同じような、勝ち組の人間だけを友達として置いている。
中には下劣な奴等もいるが、そいつらはただの都合のいい駒で、何かあった時に使えそうだから何人か手元に置いているだけ。
自分の性格の悪さも、自分が周りとは違う特別な存在だということも、俺は重々承知している。
だけどこんな俺でも出来ないことがある。

「んでさー、昨日の番組がすごく面白くって……」
ニコニコと話す茅野(かやの)に俺は視線を向けた。
今年初めて同じクラスになった茅野。
平凡な顔だが笑顔が多く、その笑顔を見ると俺はなんでも許したくなる。
自分と似たような、勝ち組の人間じゃなきゃ近くに置きたくないと思っていた俺だったが、初めて自分とは全く違う、平凡でどちらかというと地味な茅野を近くに置きたいと思った。
だけどいつもは周りから俺に近付き、その中から置いてもいいやつを選んでいたから、俺に近付いて来ない茅野とどうやって仲良くなればいいのか俺にはわからなかった。

茅野はいつもクラスの中で一番不細工な河野(かわの)とつるみ、惜し気もなくあの笑顔を河野に対して振りまいている。
それが俺には気に入らなかった。
茅野は河野みたいな奴と、一緒に居て良い人間なんかじゃない。
茅野は俺みたいな勝ち組の奴等と一緒にいて、癒してくれる方が茅野のためにもなる。
だから河野はすごく邪魔だ…






次の日教室へ行くと何時もより騒がしかった。
「おはよー、涼弥」
「はよう、裕司。…一体なんの騒ぎ?朝からざわめき過ぎじゃない?」
「ああ…涼弥は興味無いかもしれないけど、うちのクラスに茅野くんと河野くんっているじゃん?なんかあの2人って付き合ってるらしいよ」
裕司からの言葉に俺は固まる。
茅野と河野が?嘘だろ?だって二人とも男だし…、は?なんで?

「…気持ち悪い……」
「ははは、涼弥ってば正直すぎ。まぁでも確かに気持ち悪いよな。男同士ってだけでもアレなのに、茅野と河野だろ?絵にならないって。
その点、俺と涼弥なら絵になるけど、是非どうよ?」
まず俺と付き合いたいなら2股してる女の子達と別れてから来い。
それは無理だよー。女の子可愛いもん。

裕司と表面上では冗談を言い合い笑っているが、俺の内側はモヤモヤと黒い感情に埋め尽くされる。
茅野と河野が付き合ってる?…ふざけんじゃねぇ…。
なんであいつなんかと…
あんな不細工で、俺よりも全然格下の負け組の奴が、なんで茅野と付き合ってんだよ。
絶対に許さねぇ……





「クラス変わっちゃったから久しぶりだね、日野(ひの)くん」
「よっ、涼弥。…んで?話って?」
「ああ、うん。あのね……」
金髪にピアス。眉毛の無い、誰がどう見ても一瞬で不良だとわかる格好をしている日野。
こんな奴をわざわざ誰も来ない校舎裏に呼び出したのには、理由がある。

「俺のクラスに河野って奴がいるんだけど…」
「噂になってるホモの片割れ?」
「そうそう。…同じクラスで、今とっても迷惑してるんだよね」
俺がそう言うと日野はニヤッと笑った。
これだけ言えばこいつは理解してくれる。
そして俺の望むような結果を俺に与えてくれる。
こいつは数いる駒の中で一番頭が良く、その上下衆だ。

「あっ、もう1人の茅野の方には何もしないでね?」
「?おお、わかった」




結果的に言えば、日野はやはり優秀だった。
ホモだと噂が回っているだけでも茅野と河野は皆から白い目でジロジロと見られ、後ろ指を指されていた。
最初は2人とも暗い顔をしながらも学校には毎日登校し、いつも一緒に居た。
だけど目に見えて徐々に河野の様子がおかしくなってきた。
顔色が悪く、よくトイレに駆け込んでいる姿を見る。
そして歩いてる姿は、身体の節々を庇っているのか、ちゃんと歩けていない。
心配した茅野が河野に声をかけるが、河野に手を振り払われ何かを言われているのをたまたま見かけた。
その姿に俺は無意識に顔を緩ませた。




「どう?日野くん」
「順調すぎて怖いぐらい。」
どんな調子なのかいつもの場所に呼び出し、聞いてみると、日野は下品な笑いを浮かべた。
そして聞いてもいないことを日野はペラペラと喋り始めた。

いやぁマジあいつ気持ち悪いな。
殴ったり蹴ったりしてもずっと堪えてるだけで何も抵抗しねぇの。
つまんねぇから脅しで『恋人にも同じ目に合わせてやるー』って言ったら直ぐに顔色変えて『それだけはやめてくれー』ってすがり付いてきて超ウケたわ
不細工の泣きながらの懇願とか超笑えた。
んでー、仲間とストレス発散で殴る蹴るしてたんだけど、なんか飽きてきちゃってさー、趣向変えて昨日とうとう犯しちゃった。
最初は『嫌だ嫌だ』って抵抗するから面白くてさ、無理矢理手足抑えて殴りながらしたんだけど、結構男でも穴があればイケるわ。
終わる頃にはキツキツだった穴が、出した体液まみれのゆるっゆるな穴になってたのは笑ったわ。
人間あんなところに入れられるのもスゲーけど、あんなに広がるんだな。

一部気に入らないところはあったが、日野からの話で、事は順調に進んでいるんだと安心した。
これで河野が茅野に近付かなくなったり、もう学校に来なくなってくれれば最高だな。





ははははは。最高!!
丁度日野から話を聞いたその日、河野が身を投げたらしい。
学校では臨時集会が行われ、河野がいじめられていたため自ら命を絶ったと校長が話しているのを聞いて、俺は笑わないよう必死で堪えた。

やった。やった。やった!!!
これでもう邪魔な奴は居なくなった。これで茅野は……




「日野くん、ありがとう。なんてお礼言えばいいかわからないや。」
「いやいやお安いごようさ。…あとはいつも通り任せたから」
「うん、ありがとう。河野の事は俺が適当に揉み消しとくから。」
鼻歌が出てしまうぐらい嬉しくて、日野を見送った後も校舎裏でこれからどうしようかと考えていると、物陰から人が出てきた。

「っ!?茅野くん?」
俯いた茅野が何故かそこには居て、少し顔を上げた茅野は俺を睨んできた。
「今の話…揉み消すってどういうことだよ」
「ああ、聞いちゃってた?…そのままの意味だよ。河野くんがいじめられていた事も、誰にいじめられていたのかも、全部揉み消すってこと」
今まで1度も視線が合わなかった茅野と見つめ合うこの状況に俺は興奮する。
茅野が俺だけを見ている。
俺の事を気にしてくれている。

「なんでお前がそんな事…?」
「なんでって、俺が日野くんに河野くんをいじめてって頼んだからかな?」
怒りの色を見せ、さらに睨みを効かせてきた。
「なんで河野を!!!河野がなにしたって言うんだよ!」
何って……

「俺が茅野くんの事が好きだからだよ。だから邪魔な河野くんを消したかったんだ」
ニコニコと笑いながら言う俺に、茅野は驚いた表情を見せた後、また睨みを効かせ、おもむろにポケットから何かを取り出した。

「日野が河野をいじめていたのは薄々気付いていた。だから今日俺は、あいつを殺して、俺も死のうと思ってここまできた」
顔を歪ませ、目からボロボロと涙を零す茅野に驚く。
茅野が死ぬ?それはダメだ!

「…だけど俺はまた1つ、しなきゃいけないことが増えた……」
折りたたみ式のナイフの刃を出し、茅野は俺に向かって走ってきた。
それを受け入れるようにして俺は手を広げ、茅野を迎え入れた。
ドスッと肉に刃が刺さるのを感じ、茅野からもらった痛みに俺は顔を緩ませた。


「愛してるよ」




「……死ね」






補足

prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -