短編2 | ナノ


▼ あなたを愛しましょう3

「今年は食事に連れて行ってあげようと思うの」
「良いわね!きっと喜ぶわよ」
「あなたは今年はどうするの?」
「私?私は今年も手作りケーキをあげるわ」
素敵ね!とお喋りをする使用人達を壁からこっそり見て、僕はニッと笑った。
そして居ても立っても居られず、走って父様の元へと向かった。





『お仕事の邪魔になっちゃうから、あまり父様の仕事部屋には行っちゃダメだよ』と母様に言われている。
いつも母様の言うことを聞き、お仕事をする父様の邪魔をしないように近付いていないが、今日は凄く大事な用だから、きっと父様は許してくれると思う。

「父様!」
「エド?!どうした?」
僕がお部屋の扉を開けると、父様はビックリした顔をして僕を見た。
この時間はいつも母様とお昼寝をしちゃうから、僕が起きてた事に驚いたんだと思う。
不思議そうな顔して僕へと近付いてきた父様は、僕を軽々と抱き上げた。

「何かあったのか?エド」
「あのね、父様!明日は母の日なんです」
「そうだな」
「だから僕も何か母様にあげたいんです」
父様はお目目をパチクリさせた後、嬉しそうにニッコリと笑い、僕の頭を撫でた。

「それはいい案だエド!母様はきっと喜んでくれるぞ」
だけど肝心の母様に何をあげるかが浮かばない。
せっかくなら大好きな母様に喜んでもらえるような物をあげたい。
その事を父様に相談すると、迷わず「花を贈るのはどうだ?」と言われた。
僕はニッコリと父様に向かって笑った。
きっと母様にお花はよく似合うと思う。
さすが父様だ!と急いでお花を買いに行こうと部屋を出ると、父様に止められた。

「エド。父様もエドと共に城下町へ行って、母様のプレゼントを買いに行きたかったが、あいにく今は手が離せない。
だから父様の分まで母様の喜ぶ花を選んできてくれ」
「はい!わかりました」






自分の部屋へと戻り、貯金箱からお金を取り出した。
この前城下町へ遊びに行った時にたくさん使ったせいで、中には少しの小銭にしか残っていなかった。
少ない小銭を握り締め、いつもは父様と母様と通る道を、今日は1人で歩いた。
不安はあったけど、それよりも母様に喜んでもらいたいという気持ちの方が大きくて、途中から鼻歌を歌いながら花屋さんへの道を走っていった。


店先に飾られている花はどれも綺麗で、母様に何をあげようかとても迷う。
ピンクもオレンジも白も赤も青も、母様には似合う…
うーんうーんと僕が悩んで居ると、お店の中の方から店員さんが出てきた。

「僕、1人で来たの?お父さんやお母さんは?」
「いないよ」
「そうなの?」
心配そうな顔をしている店員さんに、僕は「明日の母の日のプレゼントで、母様にお花をあげたいんです。」と言うと、店員さんは目を大きく開き、次の瞬間にはニッコリ笑顔になった。
「それならね…」と、ある花を僕に教えてくれた。
その花を母の日にあげる意味や、色合いによっての花言葉の意味を聞き、僕は直ぐにその花にしようと決めた。





母様にバレないようにキョロキョロしながら廊下を歩いていると、「エド!」という僕の名前を呼ぶ声が聞こえて、僕はビクリとその場に立ち止まった。
慌てて花を隠しながら振り向くと、それは父様で、僕はホッと息を吐いた。

「おかえり、エド。ちゃんと花は買えたか?」
「はい!」
「それはよかった。母様が「昼寝から目を覚ましたらエドが居ない」と、エドを探していたから、母様に見つからないうちに花は隠しておけよ」
お昼寝から目を覚ました母様が僕を探していると父様に聞き、慌てて部屋に花を置きに行った。





『母様へ。
僕は母様が大好きです。
ご本を読むのが上手で、お料理もお菓子も作るのが上手で、たくさん笑う母様が僕は大好きです。
昔はよく父様と喧嘩をしていて、僕はすごく悲しかったです。
いつも怒った顔で、その顔を見るたびに『どうすれば母様を笑顔にできるんだろう』って、たくさんたくさん考えました。
だけど今は父様と会うたびに母様はいつも笑顔で、僕はすごく嬉しいです。
父様は母様を笑顔にさせる魔法使いです。

母様、いつもありがとうございます。』

朝起きてすぐに走って母様と父様の寝室へと向かい、既に起きていた母様に僕は抱き付いた。
そして用意していたカーネイションという花と一緒にお手紙も母様に渡した。
お手紙を読んだ母様は突然泣き出してしまい、僕は何か母様に悲しませるようなことしちゃったとオロオロしていると、父様が僕の頭を撫でてくれた。

「母様は嬉し泣きをしてるんだよ。」
「そうなの?母様、悲しくて泣いてるんじゃない?」
「ん……嬉しくて、泣いちゃった。ありがとう。俺も大好きだよエド」
母様の笑顔が、僕はやっぱり大好きだ。
母様の笑顔を見ると心がポカポカと温かくなり、僕はすごく嬉しい気持ちになる。









補足

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