短編2 | ナノ


▼ 狼不良×男前

「俺はこの世界の住人でも、人間でもねぇんだ」

突然の言葉に俺はどんな反応を返せばいいのかわからない。
これは…笑うところ、なのか?
いやでも、ロウが冗談言うことなんて今まであんまなかったし…

「なぁ…俺は何て返せばいいんだ?」
「…信じらんねぇだろうが、本当の事なんだ」
「そう…なのか」
「ユーヤの気持ちもわかる。…だから俺と来てくれ」
そう言った瞬間目の前がパーッと明るくなり、ロウの『目ぇ、開けてみろ』と言う声に、眩しくてつぶった目をゆっくり開けると、さっきまでロウの部屋のベットにいた俺達は、何故か原っぱの真ん中にいた。

「ロウ…俺は夢でも見てんのか?さっきまで俺達…」
「多分言葉では信じてくんねぇと思ったから連れてきた。…ここが俺の故郷、ルイフランだ」
俺の口は開いたまま、閉じることができなくなった。






「さて…、俺は何からユーヤに話せばいい?」

俺は驚き、口をポカンと開けていると、原っぱに沿った道の方から『ロウ様』と、ロウを呼ぶ声が聞こえ、ロウと共に振りかえった。
するとそこには黒服のモフモフとした、柔らかそうな真っ白い耳が頭に付いている男と、その横には馬車があった。
『え?何?』と戸惑っていると無言でロウに手を引かれ、そのまま馬車へと乗せられた。
俺達が座ったと同時に動きだした馬車に、俺はまだ混乱していると、足を組んだロウに『何が知りたいか』と聞かれた。

「…全部…かな?」
ふむと頷き、『それじゃあ』と言ってロウは喋り始めた。

「この国は4つの大陸に分かれた獣人の国。そしてその4つの大陸にはライオン、蛇、熊、狼の4人の王がい「待って!!!!何だそれ?!獣人?王?」」
思わずロウの言葉に口を挟むと、ロウは顎に手を添えて考え始めた。

「ユーヤ、さっき俺が人間じゃねぇって言ったのは覚えてるか?」
「…あぁ」
「じゃあちゃんと見てろよ?」
そう言った瞬間ロウの頭から耳が生え始め、気付けばあっという間に目の前には動物園やテレビでしか見た事がないような、美しい狼が現れた。

ボーッと眺めながら勢い良く頬っぺたを抓ってみたが、涙が出る程痛かっただけだった。
俺はもう、目の前のそれを信じる他なかった。



「4変形ぐらいはできる」
「お、おう」
今まで染めていると聞かされていた銀髪は地毛で、ロウは狼で、実は異世界の獣人。
多い情報量に頭がパンクしそうになるが、ここで情報をシャットダウンしてはいけないという気がして、根気良くロウの話に耳を傾ける。

「ロウが狼で、元々はルイフラン?の住人で、しかもその大陸の王様なのはわかった。……それで俺はなんでここに連れて来られた訳?」
「………それはユーヤに今後を決めて欲しい。
俺とここで生きるか、それとも今日限りでサヨナラをするか…」
「は…?」
「俺は小せぇ頃からこの大陸の王になる事が決まっていた。だから俺の最後のワガママとして、俺を知らねぇ世界に数年間だけだが行かせてもらってたんだよ。俺にとってこの世界は、息苦しいだけの場所だったからな。」
お前の世界に行って初めて俺は自由というのを知ったよ。
こっちとは勝手は違うが、あそこはあそこで俺は好きだった。
…それにお前のいる世界だしな。
本当は数年間という猶予だけで、あっちには何も後悔を残さないように過ごそうとしていたのに、お前と会ったことで俺の計画は全部パァになった。
……ユーヤがいつの間にか何よりも大事な存在になって、俺はもうお前から離れ難くなっちまったから。
だけど俺はこの世界からも離れられねぇ…
だからユーヤ、お前がこの先の未来を選んでくれ。


そんなことを突然言われても…
そう言いたいのは山々だったが、必死で自分の口を噤んだ。

「狼の姿になって、頭だけでもいいから俺の膝に乗ってくんねぇ?」
不思議そうな顔をしながらも大人しくロウは狼の姿になり、俺の膝にソッと顔だけを乗せた。

「やぁらけぇ…さっき見た時からずっと触りたかったんだよ…お前の髪と同じぐらい、毛並みもサラサラなんだな」
「触らすぐらいいつでもさせてやる。むしろ、もっと触れよ」
この姿でも喋れるのかと感心する。

「お前、相当俺の事好きだったんだな。……俺もお前のこと、凄く好きだよ。
……まぁなんだ。だから俺もお前と離れたくはない。獣人だとか王とか異世界だとか、色々混乱はしているが、お前への気持ちは変わってない」
……絶対、俺はお前に良い返事をする。
けど、今はしなきゃなんねぇことがたくさんあって、今すぐ此処にってのは出来ねぇんだ…
だから俺に少し時間をくれ。

「あぁ、お前がそばに居てくれるなら俺はいくらでも待ってやる。……ありがとな、ユーヤ」



馬車が止まり、閉められていた扉がガチャリと開かれた。
先に外に出たロウに俺もついて行くと、ズラリとお辞儀をした、獣耳が付いた者達が綺麗に並んでいた。

「「「「おかえりなさいませ、ロウ様」」」」
「あぁ…」

本当にロウは王なのだとまざまざと実感させられた。

『そういえば、ユーヤ。』
歩きだそうとした瞬間、思い出したかのように喋り出したロウに視線を向けると、少し気まずそうな顔をしてこちらを見ていた。

「最近お前、気持ち悪かったり体調不良多いだろう?あれな…」



「お前の腹に子どもがいるからなんだわ」




「……ロウくん?」
「…俺も焦ってたんだよ…お前と離れなきゃなんねぇかもしれねぇって…。……ほら、赤ん坊時は人型にはなれねぇから狼の柔らかい毛並みは触り放題だし、赤ん坊狼は可愛いぞ?」
「〜〜っ!!?許してやろう!!!!」








補足

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