(世界を拒む様な深い色を抱く)

深海の色を湛える水面から、差し込む一筋の光の様な男の白い腕が掬い上げるのは男の腕よりもどこか儚さを抱いた白。



呼び掛ける声に応える姿はなく、本来ならば雪の様な白さであろう髪を染めていた深い色が糸を引いて落ちた。

「姫、起きれるかい姫?」
男が幾度か呼び掛けたとき、虚空を映していた瞳がゆっくりと男の姿を捉え、一度二度と瞬く。深紅の双眸が世界を映した。

たぎる血の様な深紅を携えてなお無機物のような、もしくは映る世界が無機物であるかのような色をしているそれを見て、男の口元が緩やかな弧を描く。


「姫、僕が分かるかい?」

「…セカイ」



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