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 ――ぎゃああぁあぁああぁ◎※★$@×!!!――。


 蜘蛛の子を散らすように逃げていく彼らの叫びをあえて文字にすると、こんな感じだろうか。
 一帯は瞬く間にほぼ人がいなくなった。残った一部の不良や野次馬達も興を削がれたように三三五五と散ってゆく。

「お疲れ、たま。戻っていいよ」

 額を撫でられ飼い猫がするように喉を鳴らすと、彼女は来た方角へ走り去った。

「おい、なんだ今の」
「何ってペットだけど? もしかして八房君、まだ暴れたかったのかい? そんなボロボロで? なんなの、ドMなの?」
「やかましい」
「ったい! 先生〜蓮沼君がドMのクセに殴って来ましたあ」
「暴力はいけないのですよ」
「アンタが言うな」
「くじょーさんくじょーさん」

 騒がしい3人を眺めていた榊木が何かに気付き九条のシャツの裾を引く。

「あ! 万尋ちゃん怪我してない?ってうあぁあぁ顔に傷がッ! なんてことだ!! 一応女の子なのに!!!」
「マヒロはだいじょぶ! なめたらなおるの!」
「お馬鹿、ほっぺたなんてどうやって……分かった代わりに僕ガッ「見損なったわよ、山猫の」

 ごく自然にセクハラに及ぼうとした少年の脇腹をガラテアの拳がえぐった。

「ちょ、ガッちゃん素に戻ってる素に。で、なんだっけ万尋ちゃん?」
「その人だんだんカオがムラサキになってきてるの!」
 茶髪の青年は延々と頭を踏みつけられていたせいで哀れにも窒息しかけていた。

「おっと、僕殺生はできるだけしない主義なんだ。半端者はさっさと消えてよ」

 悪役じみた台詞と共に襟の後ろをつかまれ立たされると、青年はよろめきながら逃げていった。

「ずいぶんあっさり逃がすのですね」
「まあね。気分だよ気分☆」

 へらへらと笑う外道の隣で、蓮沼が落ち着かない様子で辺りを見回している。それに気付いた榊木はハムスターのような動作で首を傾げて問うた。

「ハスヌマさん?」
「ん? いや、逢坂と小鳥遊に応援頼んでたんだけどよ……来ねえな」


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bkm
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