1 少年と不愉快な仲間達
――紅城学園高等部 第六多目的室
特別教室棟の1階。
入り口から最も離れた場所。
その部屋には、学園に慣れた普通の生徒なら決して近寄らない。
そんな部屋の前に今、1人の少年が立っている。……などと書くと何やら秘密めいた物語が幕を開けそうだが、生憎オレ、小鳥遊 悠歌(たかなし ゆうた)はただの冴えない高校1年生で、唯一の特徴となっている眼鏡すら伊達というお粗末な有様である。
何分ほどそうして立ちすくんでいただろうか。いや実際はせいぜい何十秒の間の出来事だったかもしれないけれどその間に脳内では様々な葛藤が渦巻いていたのだ。
しかしこうしていてもいずれ結果は同じ。扉に手をかけ一瞬躊躇するが、覚悟を決めて渋々教室へ足を踏み入れた。
「たかなしー!!!!」
瞬間、腹部に鈍い痛みが走る。
「ぐっ……」
尻餅と腹の痛みをこらえて自分を襲った物体を確認する。
見た目小学生位の小さな女の子だった。
「榊木(さかき)……さん」
「おつかれ、タカナシ!」
「……毎日毎日あいさつ代わりに頭突き食らわすのやめてもらっていいですか……?」