3‐8
「どけよこの野郎ぉおおおぉぉ!!!」

 勢いよく振りかぶった拳はギリギリ蓮沼の後頭部からは逸れ、手に持った携帯を叩き落とす。

「あっ」

 不意を突かれて出た間抜けな声に、不良は「こいつなら倒せる」と安堵する。
 そして、相手が落ちた携帯を拾う隙に突破口を開くべく次のアクションを起こそうとした。

 しかし、すっと立ち上がった少年の目を見て、自分の判断が途方もない間違いだったことを本能的に知る。

「なあ」

 赤みの強い、鉄錆(てつさび)色の瞳。

「昔、母親に言われたことないか?」

 ごく淡々とした口調ではあるが、その目は「怒り」という感情を煮詰めて固めたような色をしている。
 次に蓮沼が言葉を発するのと、不良の顔面を鞘のついたままの刀が殴打するのはほぼ同時だった。

「『お電話してる時は邪魔しちゃいけません』ってよ」
(……ああ、そうか……)

 遠くなる意識のなか、不良はようやく気付いた。

(こいつも……こいつら全員……)

 この乱戦状態で普通に電話をかけるという、その行動の異常さに。

(「外れて」やがるんだ……)


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bkm
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