3‐5
 顎に鋭いアッパーが決まる。
 不良の筋肉質でごつい体が風船人形のように舞う。

「……」

 絶句する男達。
 数秒間、辺りには電子音だけが虚しく鳴り響いた。

「……なんだよ……何なんだよコイツ!」
「冗談だろ」
「こいつ、化け物だ……!」


 ――うん、それは否定できねえ。

 榊木の恐ろしさを身をもって体験してきた蓮沼は心の内で相づちを打つ。
 口々に悲鳴をあげながら、我に返った不良達は出口へ駆け出した。
 しかし、その程度で彼女の怒りはおさまらない。

×××

 ――中央区〜西区間アーケード街

商店街はさながらモーセの十戒。
人の波は割れ、一本の道ができる。
群衆はポカンと目の前の光景を見つめていた。

「まぁあぁあぁてえええぇぇ!」

榊木は阿修羅のごとき形相でその道をひた走る。


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bkm
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