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 ――中央区西口 ゲームセンター

 店内は平日の昼間だというのに暇を持て余した客達の声と電子音があふれ返り、完璧に掃除された空間に淀んだ空気を生んでいる。
 そこに制服姿の、カップルというにはあまりにも身長差がある男女が2名。

「なんかピコピコいってて耳がいたいよハスヌマさん!」

 榊木万尋、身長142p。

「なら帰って真面目に授業でも受けてろよ、榊木?」

 蓮沼八房、身長183p。

「『馬の耳に念仏、榊木の耳に講義』!」
「あ?」
「国語のせんせーがいってたの!」
「……そうか……」

 蓮沼は軽く目頭を押さえながら、「STAFF ONLY」のプレートが貼ってあるドアを開けた。

「おぉ? オーナーじゃねえかよ、学校はどうしたね」

 その向こうで振り返ったのはこの店の店長、秋山 博史(あきやま ひろし)だった。
 秋山は顎髭(あごひげ)をさすりながら首をひねる。
 そんな反応を前に蓮沼は動揺するでもなく指先で榊木の肩を叩いて合図を送った。


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