――鳳来島西区 某ファーストフードチェーン
その店は2階の壁の一面がガラス張りになっていて、通りから中にいる客がよく見える。
痴話喧嘩をする男女、学校をさぼったとおぼしき中高生、くたびれた顔で昼食を摂るサラリーマン。
様々な色を持つ人々が混在する中、一際異彩を放つ男が1人チーズバーガーを齧りながら、ノートパソコンのキーを叩いている。
白に赤のメッシュが入った短髪、耳はもちろん唇にまで及ぶ尋常でない数のピアス。
ミラー仕様のサングラスに服装はアーミー風。
痩せこけ丸まったその背中に異様さを感じとるように客達は自然と男の席から距離をとるが、
「らんらんるー♪」
などと口ずさみながら無駄に軽やかな足取りでその席へ向かうこれまた浮いた雰囲気を持つ少年が1人。
「やあやあ元気かい、白乾児(バイカル)君♪」
「その様子だと仕事じゃないみたいでスね、山猫の旦那?」
「やめてよ、その山奥でレストラン開いてそうな呼び方。それに高校生に『旦那』は無いんじゃない?」
文句を言いながら後から来た男は白乾児の向かいに座る。
「……あァ、そうでシたね。ところで今日はどんな情報をお求めでスか、紅城学園高等部3年、九条道行クン?」