「……どうですか?」
「不味くは、ないです」
意外だ。
てっきり「大変豪華な犬の餌ですね」とか言われると思っていた。
「逢坂さん、おれの卵焼きも食べる? おれん家のばあちゃんの卵焼き甘くてうまいんだ」
「甘い? 砂糖を入れてらっしゃるんですか?」
「うん」
「邪道です」
「ひっで! しかも即答!」
「そう思うなら貴方が食べて差し上げなさい」
……。
――なんか、こうしてると逢坂さんって案外普通の人なのかな、とか思いそうになる。
普通にしゃべるし。
普通に食べて。
普通に気なんて使ってみたり。
しかし次の瞬間、そんな「普通」は簡単にひっくり返る。
オレの携帯が鳴った。
スピーカーから蓮沼先輩の切羽詰まった声が聞こえる。
『――小鳥遊! 逢坂もそこにいるか!?』
「は、はい。どうしたんですか」
『今すぐ来てくれ! この状況……言いたくねえが俺だけじゃ無理だ!!』