2‐6

 ――高等部屋上


「うわあ、すっげー逢坂さんだ! 本物だ!」
「本物ってお前、偽物見たことあるのかよ」

 翌日の昼休み。

 オレは逢坂さんと自称オレの親友の葛城 炯助(かつらぎ けいすけ)の3人で弁当を広げていた。

「すみません、こいつ常にこんなんで」

 スポーツマンらしく明るく爽やかな男ではあるのだが、なんというか、空気の読めないのが玉に瑕だ。

「こんなんてなんだよ! だって逢坂さんってアレだろ?  入学式の日に車に轢かれかけた教頭を上段回し蹴りで助けたっていう伝説の」

 ――もういい余計なことを言うな葛城!

「……小鳥遊君、質問が」

 顔はいつもの無表情だけど、これは相当機嫌悪いな……。

「はい、なんですか?」
「なぜ私が小鳥遊君のお守りに当たっているのでしょう?」
「同じ1年だから……教室近いし」
「ではなぜ一緒に昼食を摂る必要があるのでしょう? 近くにさえいればいいのでは」
「それだと寂しくないですか? ほら、逢坂さんの分も作りましたから」
「……」
「……」
「卵焼き、入ってますか?」
「はい、あとおにぎりの具は梅干しですよ」
「……そんなに食べさせたいのなら、仕方なくいただきます」


 そう言うと、逢坂さんはもくもくと箸を進め始める。好物だったようで助かった。

 恐る恐る聞いてみる。


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