「……じゃあこれからどうするか考えるか」
「はい……って何してんすか逢坂さん」
逢坂さんがオレのポケットを探っている。会社ならセクハラで訴え……られないだろうなオレじゃ。
「これを」
「そうそう言い忘れてた、オレに《飴》渡した人の電話番号のメモ――じゃない?」
適当に折り畳んだ便箋に上手いのか下手なのかよく分からない字でこう書かれていた。
[小鳥遊君、電話番号は預かりました。]
スったの間違いだろ。
[僕はしばらく帰りません。淋しいからって泣かないでよ?]
誰が。
[その間小鳥遊君は《飴》のことは誰にも言わないで普通に生活して下さい。きっとそのうち命の危険にさらされることでしょう。]
そこはさらっと書くとこじゃない。
[なぜなら、今《飴》は無料で手渡されているようですが、しばらくすれば金で取り引きされ一気に手に入り辛くなる、要するに市場での価値が吊り上げられることが考えられるからです。YouSee?]
中毒者を増やしておけば高い値段でも売れるだろうということか。そしてなぜそこだけ英語なのか。
オレはさらに読み進める。
[と、言う訳で需要曲線に沿ってどんどん値段が高くなる《飴》は中高生の小遣いでは買えなくなり、犯罪に走る子が出たり――あるいは奪い合いになることもあるでしょう。
狙われない為には黙っているほか方法はないけれど、それでもきっとバレます。
その時の為に――]
横から覗いていた蓮沼先輩がため息をつく。
「なにがなんでも自分のやり方に持ってくつもりだな、あいつ」
「ははは……はぁ」
bkm