1‐9
――紅城学園高等部 第六多目的室

「……いまの話総括するとさあ」
「はい」
「小鳥遊君って馬鹿だよねっていう結論が出たんだけどそういう認識で良いかな?」
「……は?」
「いやだって、街中でいきなり声かけられて食べ物渡されてって……。しかもその人試供品配って歩いてたとかじゃないんでしょ? それってさ、要するに君が引っかけやすそうだったからじゃん。ぽやーっと歩いてるからだよお馬鹿さん♪」

 額を人差し指で小突かれた。爪が薄く磨かれていて地味に痛い。

「何でですか? その飴になにか……」

 オレがさらに問い詰めようとした時、保安委員会のラスト1人が入ってきた。

「ったく、何が悲しくてこんなとこ来なきゃなんねーんだ?」

 そうぼやくのは蓮沼 八房(はすぬま やつふさ)、高等部3年。つまりこの人もオレの先輩にあたるので、嫌なら来なきゃいいのにとは言わない。第一言ったところでブーメランのように帰って来るだけだ。
 彼は癖のある真っ黒な髪を掻き回しながら、荒っぽい動作で椅子に座った。そこでいつもと場の雰囲気が違うのに感づいたのか、九条先輩に尋ねる。



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