同棲赤柳2 | ナノ



木曜日、午後五時。

「たっだいまー!」
玄関で叫んでから、部屋に入ると、パソコンに向かっていたらしい柳さんが眼鏡をはずしながら言った。
「おかえり。やけに機嫌が良いじゃないか」
「へへっ、これ見てくださいよ」
ジャーン、と俺が取り出したのは、ビニール袋だ。
別にビニール袋の透明度が最高だったとかそういうことではなくて、肝心なのは中身だ。
「駅前のケーキ屋、何周年だかでシュークリームが100円になってたんですよ」
と言って、三角の紙に包まれたシュークリームを二つ取り出した。

駅前のケーキ屋にはたまに行く。
バイトの給料が出た日とかに、俺も柳さんも甘いものが好きだから、買って帰るのだ。
シュークリームはその場でクリームをたっぷり入れてくれるから美味しいけど、普段は189円と少し高い。
それだったら、コンビニで105円の方を買ってしまう。
だから、ケーキ屋の前で店員の女の子が、「本日から三日間だけ100円ですよー」と言いながらチラシを配っているのを見た時、俺はすぐに店に入ったのだった。

「なら、紅茶をいれようか」
と柳さんが立ち上がった。
「ガラガラくじもやってて、クッキー当たりました。って言っても、ハズレなしらしいんですけど。二個入ってるから一個ずつ食べましょうね」
「ああ、ありがとう」
それから、柳さんのいれた紅茶を飲みながら、シュークリームとクッキーを食べた。
美味しいな、と言われたので、美味しいですね、と言ったら、また、美味しいなと返ってきた。


金曜日、午後八時。

金曜日は柳さんの授業が七限まであるから、俺が夕飯を作る。
他の曜日は思いついた方が作るということになっているけど、大体は柳さんが作ってくれているので、俺の料理の腕はいつまでたっても上がらない。
そのため、メニューは大方決まっている。
カレー、餃子、カレー、餃子、たまにパスタ。そんな感じだ。

今日はカレーだ。
この間、餃子を作ったから、カレー。
確か、その前に作ったときは鶏肉にしたので、今日は豚肉にした。
カレールゥを入れて、ぐつぐつと煮込んでから、ケチャップやらソースやらカレー粉やら醤油やらハチミツやらを適当に入れる。
本当に適当に入れているので、最終的な美味しさは運任せだ。
一回だけ、俺も柳さんもびっくりして何倍もおかわりしたくなるくらい美味しく出来たことがあったけど、ああいう奇跡はもう二度とないと思う。

おたまですくって、味をみてから、火を止めた。
テレビをつけて、ソファに寝っ転がりながら、柳さんの帰りを待つことにする。
柳さんが帰ってきたら、鍋を温めなおして、夕飯の時間だ。
きっと、「ケチャップを入れすぎだ」と笑われるに違いない。

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