魔の神 | ナノ




「それで、あなた達の組織は何をしているんですか?そして私は、何をすれば良いんですか?」
「組織!」
幸村精市はげらげらと笑った。
私は何か面白いことを言っただろうか。
質問に答えてくれたのは柳蓮二だった。
「…俺達の目的は、魔の者が吸った生気をなるべく多く閉じ、使えないようにすることだ。魔の者が人間の生気を吸い、蓄え続けると、それはそのうち魔の者自身に強大な力を与えることになる」
「するとどうなるんですか」
「魔の神になる」
「魔の神?」
「魔の神は人の生気を吸い、自らの血とし、永遠を生きる。魔の神に生気を吸われると人は死んでしまうんだ。先ほど、魔の者が人間の生気を全て吸うことは不可能だと言ったが、魔の神にはそれが出来る。俺達は魔の神が生まれないよう、魔の者が、吸った生気を力に変える前に、その生気を閉じ込めるんだ」
「私もそれに協力しろと?」
「無理にとは言わない。ただ、誰にでも閉じる力があるわけではない。力を持つ者は貴重で、俺達はいつでも仲間を求めている」
「考える時間をいただけますか」
「もちろん」
柳蓮二が頷く横で、幸村精市は静かに微笑んでいた。
神様には私の出す答えが分かっているのかも知れない。

「今日はこのビルの一室で寝ると良い。夕食もそちらに届けよう」
「分かりました。…あの、質問を良いですか?」
「どうぞ」
幸村精市が言った。
「幸村さんは生気を増幅させることが出来ると言いましたが、それはつまり、あなたなら魔の神を創ることも可能だということですか?」
「俺はそんなことはしないけど、まあ、出来るんじゃないの」
「そうですか。では、もう一つ」
「どうぞ」
「開く者も閉じる者も、自分自身にその力を発揮することは出来ないのですか?」
「俺の知るうちでは、出来たやつはいない」
「なるほど」
「疑問は解決したかな」
「はい。ありがとうございます」
私はベッドから完全に起き上がり、立ち上がった。
頭が少し痛み、立ちくらむ。

「じゃ、柳生、良い返事を期待してるよ」
幸村精市は優雅に手を振った。
「あ!あと俺達のこと、呼び捨てにして良いからね!」
と元気良く言う。
やはり神様には、私が出す答えが分かっているのだ、と思った。


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