仁王雅治は柳蓮二の部屋の冷蔵庫を開けた。 冷たい飲み物が欲しかったのだが、隅々まで探しても、それらしきものは見当たらなかった。 諦めて扉を閉める。 「なあー、なんか冷たいもん飲みたいんじゃけど」 ベッドで未だにぐったりとしている柳蓮二に向けて声を張り上げる。 そんなものない、というような答えが、弱々しい声で紡がれた。 仕方なく、水道から直接水を飲んでみたけど、温くて気持ち悪かった。 口の中の気持ち悪さを紛らわすように、舌で舐めながら、ベッドに向かう。 ベッドの横に立った途端に、毛布の中から出てきた手に腕を掴まれた。 「なん」 「…眠い」 柳蓮二は短く答えた。 その意味を考えるよりも早く、仁王雅治はベッドに潜り込んだ。 柳蓮二の剥き出しの鎖骨に噛みつく。 僅かに呻く声が聞こえた。 「…なあ」 「どうした」 「柳生に気づかれちょるかもよ」 仁王雅治はそのことを、言うべきか言わざるべきか、この部屋に入った時から悩んでいた。 自分の勘違いかも知れないし、第一、そんなこと関係無い、と言ってしまえばそれまでのことだったからだ。 で、結局は言うことにした。 「どこまで?」 と柳蓮二は先ほどまでとは違う、はっきりとした口調で言った。 あー、やっぱ言うんじゃなかった、と仁王雅治は思った。 これで完全にラブラブイチャイチャモードからは遠ざかったな、と。 「さあ」 お茶を濁すように唇に唇を寄せてみるが、柳蓮二はぷい、とそっぽを向いてしまう。 あー、やっぱ言うんじゃなかった、と仁王雅治はもう一度思った。 [←前へ] | [次へ→] |