エピローグ 七月が過ぎ、八月になった。 俺にとって初めての大学の夏休み。 長いそれを、俺はわりと満喫していた。 恋愛と睡眠の充実は、そのまま人生の充実かも知れない、と思う。 あれから多くのことが変わり、また、同じくらいのことが変わらないまま過ぎていった。 まず、ゆりこさんの旦那さんが帰ってきた。 急な帰国だった。 それにともなって、謙也と侑士くんはそれぞれ一人暮らしを始めた。 本当に急な話だったのでゆりこさんは、いつまででもいて良い、と言ったそうだが。 結局、二人ともすぐに部屋を見つけてきた。 侑士くんの家には、引っ越し祝いをかねて謙也と二人で遊びに行った。 高いゼリーを買って。 何も訊かれはしなかったけど、侑士くんは終始にやにやしていて、俺はいたたまれない気分になった。 謙也は俺の隣の空き部屋に入居し、本当の隣人になった。 これはゆりこ家の最後の晩餐で大きな話題を呼んだ、らしい。 詳しくは分からない。訊かない。 どうせにやにやされるだろうから。 二人は今も『彩菜堂』で働いている。 夏休みになって謙也は以前より働く時間を増やした。 必然的に俺の来店数も増えた。読書量も増えた。 謙也の仕事が終わるのを待って、同じアパートに一緒に帰っている。 もちろんどちらかの部屋まで一緒のこともある。 そして俺の眠れない夜は。 今のところ訪れる気配はない。 もうこないだろう。 俺の隣にはいつも謙也がいるのだから。 -END- ----- 途中長いこと間が空いてしまいすみませんでした。 なんとか終わらせることができました。 ほのぼのが書きたかったはずでした。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 山本きほう [←] | [→] |