ひねもす | ナノ

01



目が覚めるとベッドの上にいた。
頭が痛い。
口の中が酒臭いような気がする。
時計を見ると、まだ七時前だった。
今日は日曜日だ。
特に予定も無いし、もう少し寝ていても良いかも知れない。
剥いだ掛け布団を戻そうとして、ふと頭の中に一つ疑問が浮かんだ。
あれ、昨日はどうやって帰って来たんだっけ?

確か昨日は合コンに行って、それを途中で抜けて侑士くんとゆりこさんと飲んで、それで、その後はどうしたんだっけ?
必死に頭を捻ってみる。
けれど靄でもかかったように、薄ぼんやりとしか思い出せない。
一体どうやってアパートに帰って来たんだろう。
二人が送ってくれたのか、運んでくれたのか。
そういえば侑士くんが肩を貸してくれてた。
それは憶えている。
それで……それで……。
考えれば考えるほど、頭が痛くなっていく。
それでも、断片的に憶えていることを、少しずつ繋げてみた。

居酒屋からの帰り道、俺はバス停で謙也と話をしていた。
いや、どちらかというと、俺が一方的に喋っているだけだった。
バスが帰って来ない、という意味不明の内容だ。
しかもそれだけじゃない。
もっと何か良くないことも口走ったような気がする。
ずっと待ってたのに、とか。深読みすれば恨み節にも聞こえてしまうようなことも、言ったかも知れない。

その後は眠ってしまったのか、次の記憶はアパートの廊下だった。
謙也が俺に、鍵はあるかと聞き、俺がもたつきながら鍵を差し出す。
謙也が開けてくれたドアから、なだれ込むようにして部屋に入った。
確かベッドにも謙也が運んでくれたはずだ。
そしてそのまま寝て、今に至る。

「あかん……俺、最悪やん……」
というか頭が痛い。
ずきずきと痛む頭を抱えて、台所に向かった。
水を飲んだら頭痛が軽減されるかと思ったけど、そうでも無かった。
代わりに口の中の酒臭さはやわらいだような気がした。
二日酔いの薬を買いに行こうかと思ったけど、面倒だったのでやめた。
またベッドに戻ることにした。

再び目が覚めると頭痛が治まっていた。
もう昼を過ぎている。
今度こそ起き上がり、洗面所で顔を洗う。
歯を磨いて、また水を飲んだ。
熱いシャワーを浴びると、頭はもう完全にすっきりとして、いつも通りに戻っていた。
適当に服を着て、サンダルを履いた。
そういえば、謙也はどうしてあの場にいたんだろう。
それともあれはやっぱり夢だったんだろうか。
どちらにせよ、謙也本人に確かめてみなければ分からない。
もし夢じゃなかったのなら、ちゃんと謝って、お礼もしなければ。
俺は玄関のドアを開けた。



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