仁王とはそれから、毎日のようにメールのやり取りをした。 学校のこと、面白かった本のこと、日常の小さなことをメールで送り合った。 仁王が学校で作ったという菓子の写真を送ってくることもあった。 だから、仁王がまた会いたいと言ってきた時、柳は特に迷いもせずに了承した。 行ったのは動物園だった。 水族館の次に、動物園。 ならば次は映画館か?と言えば、学割は活用せんとな、という返事なのかよく分からないものが返ってきた。 仁王も柳も外の動物はそっちのけで、爬虫類コーナーに長いこといた。 身体がぬめっとした爬虫類は、人によっては不気味かも知れないが、柳は好きだった。 仁王もそうらしい。 食事はハンバーグを食べた。 牛を見てはいなかったけど、弱肉強食、という言葉が思い浮かんだ。 その次は本当に映画館に行った。 ただし、映画は見なかった。 お土産コーナーを見て、ポップコーンと飲み物を買ってから、ロビーのソファに座って、そこらへんにいる人たちを観察した。 カップルの数を数えたり、遠くで話している人たちのアフレコをしてみたり、あの家族は実は家庭が崩壊しているんだ、という気分で見てみたり(あんなに幸せそうなのにな、と暗い気分になったと仁王は言っていた)、と中々に馬鹿馬鹿しいことに熱意を注いだ。 更にその次は競馬場、次はカフェ巡り、プラネタリウム、居酒屋、公園でピクニック、チェーンのコーヒーショップで喋り続ける、そうして一ヶ月のほとんどを仁王と過ごせば、柳の方にも好きだという感情が沸いてきた。 一緒にいる時間が長いというのは、イコールではないにしろ、好きになる要素には十分になりえる。 向こうに好意があると分かっている場合には特に。 「付き合おうか」 ファミレスで食事を取っている最中に、柳は言った。 仁王はもぐもぐと動かしていた口を止め、ごくん、と中のものを飲み込んだ。 それから、「もう付き合っちょると思うとった」と言った。 「それは知らなかったな」 「だって、のう?こんなに毎日のように一緒におるのに。俺、蓮二は友達いないのかと思って心配しとったくらいじゃよ」 「奇遇だな。俺も、お前には俺以外に友達がいないんだろうなと思っていた」 「それ正解。今まさに蓮二も友達じゃなくなったから、俺、友達ゼロじゃ」 「可哀想に」 以前話していた甘党の親友はどこにいったんだ、と責めないのだから、俺は優しい恋人だな、と柳は思った。 [←前へ] | [次へ→] |