「蓮二は大学で何勉強しとるん?」 「さあ」 「教えてくれんの?ま、ええけど。んじゃー、好きな食べ物は?」 「和食」 「朝は味噌汁にご飯派か?」 「だな。お前はカロリーメイト一本派っぽいな」 「残念。俺も味噌汁にご飯派じゃ。実家住みじゃけ。蓮二は一人暮らし?」 「いや、俺も実家だ」 「どの辺?この近くか?ってそこまでは答えてくれんか。じゃ、得意なスポーツは?」 「テニス」 「テニス!」 途端に、仁王の目が輝く。 「俺もテニスやっとったぜよ!中学と高校」 「俺は中学生の時だ」 「のう、そん時も神奈川に住んどった?」 「ああ」 「やったら、大会とかで会っとったかも知れんのう。俺の家、この辺じゃけえ」 「かもな」 柳が賛同すると、仁王は嬉しそうに笑う。 そして、「な、テニスと野球って、似とる気がせん?」と意味の分からないことを言い出した。 「どこが」 思わず、柳も笑っている。 「テニスはダブルス?シングルス?」 「どちらもやるが、どちらかというと、ダブルスの方が得意だった」 「俺もじゃ。今はもうやらんの?」 「たまにやる。それこそ、中学生の時のチームメイトと会う時とか」 「ほんじゃー、今度俺ともやろ、な」 今度があると思っているのだろうか。 「ちゅーか、中学ん時のやつらと仲良いんじゃな」 「それなりに」 「妬けるのう」 ニヤニヤと笑みを浮かべている。 「何がだ」 柳はそれを軽くあしらう。 「ええのう。つれないっちゅうんもそそるぜよ」 仁王が不敵に笑った。 女だったら、思わずドキッとするような表情なのかも知れない。 「でも、蓮二、意外と俺のこと気に入っとるじゃろ」 「なぜそう思うんだ」 「やって、そうやなかったら、今こうしとらんじゃろ?ちょっとは興味があったから、俺について来て、こうやって質問に答えとる」 無理矢理引っ張ってきたのはどいつだ、と言いたかったが、あながち間違いでもないので黙っておいた。 「な、自分で言うのもなんじゃけど、俺、お得物件やと思うよ?」 「お得か」 「お得もお得、超大特価じゃ」 柳は、改めて仁王をじっと見てみる。 確かに彼は格好良いし、性格も明るく、多少ふざけたようなところがあるが、ほどよい軽さは一つの魅力のようにも思えた。 だが、そう思うと余計に分からなかった。 「なぜ俺なんだ。お前は同性愛者なのか?」 「直球じゃのう。ぶっちゃけるとどっちでもええんよ。ただ、今まで付き合ったんは圧倒的に女のが多い。男はよっぽど好きじゃない限りはリスクおかす気にはなれん」 「リスク」 と柳は繰り返す。 「普通の男は、男に好き言われても、好きになってくれる可能性は低いじゃろ」 「俺はそのよっぽどに入るのか」 「当たり前じゃ。見た瞬間、こいつじゃ思ったち。一目惚れっちゅうんかの」 柳は再び、あ、嘘だな、と思った。 [←前へ] | [次へ→] |