綺麗はこわい | ナノ

01 テニスコート




同級生の中に、化け物みたいな三人がいることは知っていた。化け物みたいに、テニスが強い三人。

真田弦一郎は、その風貌と一致した、情け容赦のないテニスをした。正面から、力でねじ伏せるような。
幸村精一は、中性的で、女みたいな顔をしているのに、真田も敵わないほどの強さだった。

初めて彼らのテニスを見た仁王は、この化け物たちと同じ学年になってしまったことを、喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか分からなかった。
強いのは良いことだ、たぶん。
でも、なぜ同じ学年なのだろう。
年上ならば、あるのは尊敬という感情だけだったんじゃないか。

同い歳なのに、なんじゃ、この差は。
嫉妬や戸惑い。
そういう感情が渦巻いて、仁王の頭の中をぐるぐる回っていた。

仁王は、頭にぐるぐるを抱えたまま、三人目の化け物、柳蓮二の試合に目を向けた。
柳は、相手の打った球を、確実に正確に相手の苦手な部分に落としていった。寸分の狂いもなく、迷いもなく、彼の打つ球は真っ直ぐにコートに落ちていった。

「綺麗じゃ」仁王は思った。
柳のテニスは、とても綺麗だ。あんな綺麗なテニスは、見たことない、と。
さっきまで、自分の中に渦巻いていた感情が、シュー、と音がするように抜けていくのを感じた。

仁王は思う。
同じ学年になってしまったことを、喜ぶべきか、悲しむべきか。
きっと、喜ぶべきなのだ。
だって、明日も、彼のテニスが見れる。明後日も、その次も、これから、毎日。



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